2月下旬に発表になった県の県民健康管理調査の結果で、住民の58%が年間被ばく量の推定値が1ミリシーベルトを下回ったとありました。よく基準になっている「1ミリシーベルト」の意味や健康との関係について教えてください。
【回答者】 県放射線健康リスク管理アドバイザー・長崎大大学院教授(放射線医療科学専攻) 高村昇さん
■細胞中遺伝子に1つ傷つく 短時間で修復でき 影響ない
国際放射線防護委員会(ICRP)は「平常時における一般公衆の線量限度を年間1ミリシーベルト以内とすること」と勧告しています。その一方でICRPは今回のような放射線災害が発生した際には「年間100~20ミリシーベルトの範囲のなるべく低いレベルの被ばく線量で抑える」、いったん災害が収束した後には「年間20~1ミリシーベルトの範囲で徐々に被ばく線量を下げていく」とも勧告しています。
このようなICRPの勧告は100ミリシーベルト以上の放射線被ばくでは、がんなどの健康リスクが上昇することを踏まえた上で、平常時には放射線を被ばくする線量をできるだけ低く抑え、放射線災害時には100ミリシーベルトを下回る範囲内で、合理的に達成可能な範囲でできるだけ低く放射線被ばく線量を抑えていく、という考えに基づいています。では、1ミリシーベルトという線量はどのような意味を持つのでしょうか?
よくいわれるように、ヒトの細胞が1ミリシーベルトの放射線を被ばくすると、細胞の中にある遺伝子に一つ傷がつきます。しかし、その傷がすぐに健康に影響を及ぼすわけではありません。ヒトの細胞には傷ついた遺伝子を修復する、という機能がもともと備わっています。
1ミリシーベルトの被ばくでついた遺伝子の傷は、短時間で修復されます。この遺伝子が傷つき、それを修復していくという過程は紫外線などによっても普通に起きており、1つの細胞で1日に数万回程度起きていると考えられています。
(カテゴリー:放射線・放射性物質Q&A)