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帰還/広野からの報告(38)バス通学に戸惑い 生徒減少...新たな一歩

 長距離通学の負担に保護者の心が揺れる。
 いわき市の中央台南小と湯本二中にそれぞれ間借りしている広野小と広野中は、除染や補修が完了する今年の2学期から町内の本校舎に戻る。広野小は今春、83人の児童のうち20人が卒業し、6人の新入児童を迎える。広野中は23人のうち13人が卒業し、11人が新たに入学する予定だ。しかし、2学期を境に両校の児童、生徒数は変動しそうな気配もある。
 いわき市に居住する広野町民は約4千百人で、二学期になっても相当数の児童、生徒の居住地は市内と予想される。広野町役場~いわき市役所間は渋滞がなければ車で約40分。このため、両校ともスクールバスを運行し、通学の足を確保するが、特に小学生を持つ親には長時間のバス通学を心配する声がある。
 市内の仮設住宅に住む女性(35)は、小学4年生の長男を仲の良い友達が通う市内の小学校に転校させたいと考えている。「5年生になれば学習内容も増える。仮に往復二時間かかるとしたら、その時間は勉強も遊びもできない」と難点を語る。同じ仮設にいる女性(33)はできるだけ早く町内の自宅に戻りたいと考えている。その際の転校を避けるため小学2年生の長女は引き続き広野小に通わせる予定だ。ただ長距離通学は心配。「実際に通ってみて娘が体に負担を感じるなら考え直すかも...」と言う。
 町教委は保護者のこうした不安を解消するため、マイクロバスを複数台確保し、できるだけ短時間で到着できるよう、詳細にルートを検討する。朝は原発作業関連の車で6号国道が渋滞するため、始業時刻を遅らせることも考えている。放課後、子どもを預かる児童館も2学期に再開するため、帰宅時間にも柔軟に対応する。

 部活動ができないことが中学生の心を遠ざけた。
 震災前、生徒数約230人だった広野中は体育館のほかに武道場も備え、野球や剣道などの部活動が盛んだった。いわき市平の借り上げ住宅に住む広野小卒業の1年生男子は平地区の中学校に通う。スポーツ少年団で頑張ってきた野球を続けたかったからだ。広野中には戻らず平の中学を卒業するつもりだ。
 広野中への愛着を持ち続ける生徒もいる。市内常磐の仮設住宅で暮らす二年生の女子はバレーボールを続けたくて常磐地区の中学校を選んだが、練習では広野中の体操着を着ていた。3年生として中体連が終われば、部活も引退して広野中に戻りたい気持ちもある。
 「みんな帰りたいけど、帰れないんです」。22日、体育館のどん帳の除染を手伝うため広野中を訪れた吉田隆見校長は生徒の心情を思いやった。校舎の除染はほぼ終わり、校庭に新設した放射線測定器の値は毎時0・14マイクロシーベルトまで下がった。学校に戻ったら団体競技は難しいものの生徒の要望に応じて部活動を行う考えだ。「学校は町のシンボル。町の再生に欠かせない。新しい広野中の歴史をつくる」と決意している。
 幼稚園と保育所も同時期に再開するが、現時点で入園予定者数は分からない。芦川鋭章(としゆき)町教育長は「通学路も含め除染を徹底する。子どもの安全・安心を確保し、地道に教育環境を整えたい」と展望している。
 (「広野からの報告」は終わり)

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