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【覆された備え14】避難路限られ 車集中 114号国道の整備遅れ

昨年3月12日、114号国道は津島支所方面に向かう車で渋滞した=浪江町提供

 浪江町内の114号国道は、町中心部から西側の津島方面に向けて車の長い列が続いた。昨年3月12日、東京電力福島第一原発事故の避難指示が10キロ圏に拡大され、町民約8千人が一斉に西を目指した。
 町も役場機能を福島第一原発から約27キロ離れた津島支所に移すことを決断した。「しんがり」ともいえる町の防災担当者は午後3時ごろ町役場を出発した。津島支所まで、通常なら30分程度の道のりだ。「なかなか進まない...」。渋滞の中で、もどかしさが募る。到着したのは約3時間後だった。
 津島地区の学校や集会所などの公共施設はどこも満車状態だった。入れない車が路上にあふれた。
 津島支所は阿武隈山系の標高500メートル前後の場所にある。3月とはいえ、近くには雪が残る。施設に入れない町民は路上に止めた車で眠れぬ夜を過ごした。津島地区を通り越し、川俣町や福島市などに向かった町民もいた。

■かごの中
 浪江町内の主要道路は地震と津波の影響を受け、車の通行が困難な場所が多かった。
 6号国道は町の北側の南相馬市小高区で冠水した。もちろん、福島第一原発に近づく南には向かえない。
 海沿いを通る県道広野小高線(浜街道)は津波で壊滅状態だった。山沿いの県道いわき浪江線(山麓線)も陥没や亀裂が相次いだ。
 一方、西に通じる114号国道に大きな損傷はなかった。「114号国道が通行不能に陥っていれば、町民は『かごの中の鳥』も同然だった」。町職員は避難路を絶たれかねなかった危機的状況を例えた。

■福浪線
 114号国道は総延長約70キロで、浪江町と福島市とを結ぶ。双葉郡の住民は「福浪線」とも呼ぶ。県の地域防災計画で「優先的に確保すべき路線」の第2次確保路線に位置づけられる。
 名称は国道だが、県が主体となって管理・整備し、バイパス工事などを続けてきた。ただ、県土木部の担当者は「114号国道の整備には費用がかさむ。手を付けにくかった箇所が遅れた」と悩ましい表情を浮かべた。
 阿武隈山系を横切るルートは高低差が激しい。海に近い浪江町の6号国道との接続箇所は標高約10メートルだが、浪江町と川俣町山木屋地区の境界にある「水境」付近は約580メートルある。しかも、カーブが多い上に、道幅が狭い場所がある。山間部の拡幅は難しく、改良にはトンネルやバイパスの新設が必要だった。
 既に「水境」地区をはじめ、福島市の「渡利」、川俣町の「川俣」の各バイパスが完成している。ただ、各区間の整備期間は10年前後から二十数年の長期にわたった。
 現在、トンネル工事などを進めている川俣町小綱木地区は、平成23年度までに県費と国の補助金を合わせて約18億円を投じた。完成までに、さらに同額程度の費用がかかる見通しだ。

■復興道路
 双葉郡内の8町村と沿線の市町村などは平成10年、整備促進期成同盟会を設立した。
 「緊急時の避難道路として、さらには、救急物資の輸送路として、重要な役割を担う」。同盟会は毎年度の事業計画に盛り込んだ要望活動に当たって、避難道路に位置づけてきた。
 「緊急時とは、原発の非常事態の意味だった」。かつて、同盟会の事務局を担当した町生活支援課長の中田喜久(56)は、地元が原発事故に備え、国や県に要望してきたことを強調する。
 原発から放出された放射性物質の大きな流れの1つは、114号国道のルートに重なるかのように西に向かったとみられている。1年余りが過ぎた今も、道路の周辺には放射線量の高い場所が残る。だが、浪江町を含む相双地方や阿武隈地域の復旧・復興に欠かせない路線に変わりはない。
 「放射性物質で汚染されていても、大事な道路なんだ。トンネルなどで遮蔽(しゃへい)してでも使えるようにすべきだ」。中田は町民の切実な願いを訴える。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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