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【放射線対策(下)】農地除染 決め手なし 民間提案型も効果低く

県内各地で行われている農地の反転耕。放射性物質を完全に除去できず、農作物への吸収抑制対策が課題となる

 県や日本原子力研究開発機構(JAEA)の実証試験で、構造物の除染技術に一定の効果が見えた一方、農地除染は課題が山積している。放射性物質をなくすには表土除去が最も効果的だが、大量の廃棄物が生じる。住宅除染は一律の対応が難しいのが実情で、山林の除染技術は手探り状態が続く。

■1軒500トン
 県によると、10アールの農地で厚さ5センチの表土を除去すれば、廃棄物は50トンに上る。県内の水稲農家の平均的な水田面積は約1ヘクタール。農家1軒につき500トンもの廃棄物が生じる計算だ。県農林地再生対策室の担当者は「農家1軒から、10トン積めるダンプ50台分出る。1つの集落から出る量は膨大で、広大な仮置き場がなければ表土除去は事実上、不可能」と苦い表情を浮かべる。
 土壌から放射性物質を吸着した粘土質と、他の土を分けて処分する技術も民間企業などが研究している。だが、粘土質を分離した土壌は性質が変化し、農業用の土としての機能を失いかねない。廃棄物は減っても、農地が使えなくなる恐れがある。JAEAの研究者は「詳細に事前測定してから表土除去し、廃棄物の量を最小限に抑えるべき」と指摘する。

■技術開発に期待
 県内では平成23年度、警戒区域などを除く大部分の水田で水稲が作付けされた。これらの農地は耕したことで放射性セシウムが土の内部に入り込んでいるため、表土除去の効果はない。このため、表面から15センチ程度とその下の15センチ程度を入れ替える「反転耕」か、通常より5センチ以上深く耕す「深耕」で対応することになる。県によると、いずれも放射性物質を除去せず封じ込める対策のため、放射線量がゼロにはならないという。
 反転耕は封じ込め効果は高いが、土壌の厚さが30センチ以上なければ実施できない。県は反転耕か深耕で土壌に含まれる放射性物質の濃度を下げ、その上で農作物の吸収抑制対策を施すことで安全性を確保したい考えだ。
 吸収抑制には、鉱物のゼオライトやカリウム肥料を農地に散布する手法がある。県の試験では、ゼオライトを使うことで、土壌の放射性物質の濃度は半減した。
 県はさらに効果的な技術を探ろうと民間提案型の実証試験を行ったが、現段階で民間企業が提案した物質は、いずれもゼオライトに比べて効果が下回った。現段階で農地の除染に「決め手」はなく、県は「民間企業や大学の今後の技術開発に期待するしかない」としている。

■住宅除染にも難題
 住宅関連の除染実験の現状は【下】の通り。屋根や壁の材質はさまざまで、一律の対応は難しいのが実情だ。
 住宅の2階部分の放射線量が1階より高いケースがあるが、JAEAは「屋根より周辺の山林などの影響が大きい」と指摘する。放射性物質から放出されるガンマ線は、平均で100メートルほどの範囲に影響するという。このため、周辺を測定した上で、局所的に放射線量が高い「ホットスポット」となった側溝や水路の除染が必要となる。

■境界柵有効?
 県内には広大な山林が存在するが、効果的な除染技術は確立されていない。JAEAの研究者は「長期的に対応するしかない」と指摘する。
 山林の樹木を次々と伐採すれば、膨大な廃棄物が出る。さらに、保水性が下がり、土砂崩れを起こす危険性もある。このため、枝打ちや間伐などを計画的に進める必要があるという。地面で土や落ち葉に付着した放射性物質が移動するのを防ぐため、山林と住宅などの境界に柵を設ける対策が有効とみている。


【住宅関連の除染実験の現状】
屋 根 
・住宅の屋根は瓦やトタンなど材質が多様で、一律の対応は難しい。現在も残っている放射性物質は1年余り風雨にさらされても落ちず、強固に付着している。高圧洗浄は材質を傷める懸念もある。JAEAは、拭き取りやブラシでこすり取る手法、雨どいの清掃が効果的だとみている。
壁 面 
・県は「空間線量が特に高い場所を除き、汚染の度合いは低い」とし、事前に測定した上で線量が高くない場合、除染作業は不要とみている。県の実地試験で、壁面の洗浄は効果が認められなかった。
芝 地 
・枯れた芝草などを除去するエンジンブルマー(回転ブラシ)は操作しやすく、傾斜や起伏がある地形にも対応できる。県の実地試験では表面線量が53%減少した。県は「ブラシの改良など除染効果を向上させれば、普及が期待できる」と評価する。
水 路 
・県の実地試験で、もみ殻をフィルターに使い、放射性物質を吸着させる手法に効果が確認された。90%近く除去することができた。もみ殻は入手しやすく安価であるため、水路や排水の処理に適用できるとみられる。

カテゴリー:3.11大震災・検証

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