東日本大震災アーカイブ

【県民健康調査問診票】企業・団体訪問効果薄く 回収率依然低調

 東京電力福島第一原発事故を受け県が実施している県民健康管理調査の基本調査の問診票回収率は3月末時点で21.9%と依然、低調だ。2月からは企業・団体訪問を実施し、問診票提出を呼び掛けているが、効果はいまひとつだ。原発事故から1年2カ月が経過し、県関係者は「事故当時の記憶がますます薄れ、このままでは7割近い県民が回答しないケースも想定される」と危機感を強める。

■特効薬なし
 問診票回収率は1月20日時点から約2カ月で1・1ポイントしか伸びていない。
 企業・団体訪問は打開策の柱の1つだが、苦戦が続いている。「外部被ばく線量を推計する唯一の手段。意義を理解していただきたい」。福島医大の職員らは県内の企業経営者に頭を下げる。社員に問診票の記入を呼び掛ける企業も出てきたが、効果は未知数だ。
 また、仮設住宅に併設されている集会所などで問診票の書き方説明会を18回催した。詳しく指導するため、1回当たりの参加者は20人規模だ。県の担当者は「粘り強く回収率向上を目指していくが、特効薬は見当たらない。時間だけが過ぎる」と唇をかむ。

■甲状腺検査
 県民健康管理調査では、基本調査と並行して、原発事故当時、18歳以下だった約36万人に対し甲状腺検査も展開している。長期間に及ぶ検査のため、担当する医師の養成が急務となっている。
 甲状腺検査は平成26年3月までに1回目を終え、同年4月からは対象者が20歳までは2年に1回、それ以上は5年ごとの実施に移行する。当面は毎年、18万人程度が受診する計算だが、超音波診断装置を操作し、甲状腺の異常を見抜く技能を持つ県内の医師は、10人程度にとどまっている。
 現在は、日本甲状腺学会などの協力を受けて実施しているが、福島医大の関係者は「全国的に医師不足が続く中、2回目の検査以降は協力を得る確約を得られていない」と語った。甲状腺検査の専門医師は全国でも限られており、講師の確保も容易ではない。このため県内の医師向けの養成講座を開くにも限界があるという。
 県保健福祉部の職員は「人的な体制整備が不可欠だが、現段階で対策は全く進んでいない」と嘆く。

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