東日本大震災アーカイブ

川内のコメ必ず復活 首都圏から体験ツアー 流通網開拓へプロジェクト

参加者に作業手順を教える秋元さん(中央)

■農楽塾塾長 秋元美誉さん68
 東京電力福島第一原発事故に伴いコメの作付けを自粛している川内村で12日、地元産コメの新たな流通網の開拓を目指す「復活の米プロジェクト」が始まった。プロジェクトを主催する農楽塾の塾長で同村上川内の農業秋元美誉(よしたか)さん(68)は「古里の農地を必ず再生させる」と決意する。
 村民有志らでつくる農楽塾は、東日本大震災発生前まで首都圏からの農業体験ツアーを実施してきた。プロジェクトは村商工会、村観光協会との共催事業で、平成25年度以降の作付け再開に備え、生産者と消費者をつなぐ独自の流通システムを構築することが目的。同塾は作付け再開後に収穫したコメを「福幸米(ふっこうまい)」と名付けて販売する予定だ。
 今月から村ではコメの試験栽培が始まっている。今年度は試験栽培の現場で、消費者に直接、田植えや稲刈りなどを体験してもらうことで食の安全・安心をPRする。秋元さんも試験栽培に取り組む1人で、プロジェクトの参加者は秋元さんの水田で田植えなどを体験する。今年収穫したコメは食べられないが、秋元さんは「農作業を通じて多くの人に現状を理解してもらうことも大切」と話す。
 初日は首都圏などから男女約10人が参加し、苗代から苗を引き剥がす作業などを体験した。13日は村内の天山文庫付近にある10アールの水田で田植えを行う予定だ。秋元さんは「コメ作りが始まると考えると、気分が高揚する。消費者と交流の輪を広げながら、一歩ずつ前進していきたい」と言葉に力を込めた。
 震災前まで、毎年、350アールの水田に作付けしてきた秋元さん。「コメが売れ残っては意味がない。知恵を絞って少しでも多くの販路を見つけなければ、農家は風評被害に押しつぶされるだけ」と訴えた。

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