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【昨年末発足の産業復興機構 1】債権買い取り進まず 事業計画策定が壁 売上高算定に企業苦悩

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で被災した中小企業の二重ローン対策支援のため昨年末に設立された「福島産業復興機構」の債権買い取りが進んでいない。19日現在、成立したのはわずか1件。原発事故により先行きを見通せない企業にとって、債権買い取りに必要な事業計画を策定することが難しいためだ。

■空振り
 受付窓口となる県産業復興相談センター(福島市)は、4月20日時点で161企業から延べ163件の相談を受け付けた。津波で工場などの設備が壊れたり、原発事故による風評被害で営業利益が低下したりした浜通りの企業が全体の6割を占めるという。
 しかし、担当者は「実際は制度に関する質問が多く、95件は助言や説明で終わってしまった」と明かす。残り68件のうち、同日時点で債権買い取りに必要な事業計画の策定や不動産鑑定などの調整に入っていたのは、わずか4件だけと動きは鈍い。
 国が設立した「東日本大震災事業者再生支援機構」は3月に開所したばかりだ。被災3県などから受けた相談は計265件で、本県分は34件と1割強にとどまる。

■視界不良
 「やっぱり難しい」。センターでは、相談してきた事業者からそんな言葉を聞くことが多い。事業者が頭を悩ませているのは、債権買い取りの判定に必要な今後の事業計画を策定することだ。
 原発事故に伴う避難区域はいつ解除されるのか、除染は進むのか、避難した住民は戻ってきてくれるのか-。本県を取り巻く状況は先行きが見えず、将来の売上高や余剰資金額を盛り込む事業計画策定が困難だという。
 双葉郡の警戒区域から避難し中通りで営業を継続している企業の男性社長は「今も社員を募集しているが応募はゼロ。将来帰還するとして、社員がついてきてくれるか分からない。将来の会社の姿など想像もつかない」と苦悩を明かした。
 センターの三瓶友栄窓口相談等統括責任者補佐は「われわれが事業計画策定を支援すると伝えても、事業者は諦めてしまう。なかなか買い取りが進まない」とため息を漏らす。

■保護
 債権買い取りが進まない背景には、国や県などの中小企業支援策が充実していることを挙げる見方もある。
 政府は、貸し付け条件の緩和に応じるよう金融機関に努力義務を課した中小企業金融円滑化法の期限を来年3月まで再延長した。一方、県も平成24年度当初予算案で、複数の中小企業で構成するグループが施設・設備を復旧する際に補助するグループ補助金に約149億円を計上するなど手厚く予算を配分した。
 ただ、こうした支援策がいつまでも続く保証はない。センターは円滑化法が期限切れとなる来年3月以降、企業の資金繰りが厳しくなるとみている。「返済猶予に対応してもらえない企業が出て、債権買い取りのニーズが増えるだろう。今は病気にかかっているのに発症していないような状態。各事業者は早めに対応してほしい」

【背景】
 福島産業復興機構は、経済産業省が中心となり本県などと共同で設置した投資事業有限責任組合。昨年末に設立され、県産業復興相談センターが企業に事業計画策定の支援などを行っている。債権買い取りが決定すれば返済が原則10年、最長で15年猶予される。東日本大震災事業者再生支援機構は自民、公明両党が関連法案の成立を主導し今年3月に発足。復興機構では支援困難な企業も対象としている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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