東日本大震災

「3.11大震災・断面」アーカイブ

  • Check

【昨年末発足の産業復興機構 2】条件多く利用困難 算定や債権者同意... 「見直し必要」との声も

 中小企業の債権買い取りが進まない福島産業復興機構。制度的な課題を指摘する声もある。震災前に赤字だった企業は対象にならないなど間口が狭い上、買い取り額の算定方法が債権者に不利になるケースもあり、買い取り決定の条件である債権者全員の同意が難しいためだ。関係者からは「見直しが必要」との声も上がる。

■狭き門
 「10件以上の相談を機構につないだが、いずれも門前払い。とても現実的な支援制度ではない」。債権買い取りが成立するための条件が多く、ある商工団体の関係者は不満を漏らした。
 債権買い取り価格の算定方法のモデルケースは【図】の通り。
 震災前3年間の平均余剰資金額を基にして、予測した今後5年間の余剰資金の合計が買い取り額となる仕組みだ。この方法では、震災前3年間が赤字だった企業は基本的に支援対象にはならない。
 債権者である金融機関にとっても債権額より低額になりやすいという。買い取り額の算定に債権額は反映されないからだ。
 例えば、震災前3年間の平均余剰資金が1000万円であれば、債権額が1億円であろうと10億円であろうと関係なく、買い取り額は5000万円程度になってしまう。
 その上、買い取り決定には債権者全員の同意が必要。複数の金融機関が債権者となっているケースが一般的で、調整は難しく時間がかかるのが実情だ。
 「万人は救えないが、救えるところは救うシステムになっている」。機構の関係者は制度の限界を認める。

■補完
 今年3月には野党が主導した国の「東日本大震災事業者再生支援機構」も発足した。返済猶予期間は最長15年と、産業復興機構と同じだが、震災前に赤字だった会社も支援対象に含めるなど、復興機構より間口は広い。
 支援機構は今月16日、浜通りの農事組合の債権買い取りを決定した。初の支援先となるが、関係者は「金融機関との調整に時間がかかりながらも、設立2カ月で支援先が決まった。さらに、最終調整中も全国で14件ある」と強調した。

■地域重要度で判定すべき 奥本福大准教授
 福島大経済経営学類の奥本英樹准教授(専門・ファイナンス)は、制度について「資金ニーズの点では、債権買い取りは必要な考え方。ただ、企業の復旧・復興にはスピード感が重要。金融機関にとっても先を見通すことは難しい。現在の手法では、債権買い取りまでの調整に時間がかかりすぎる」と問題点を指摘する。
 その上で「金額ベースで決めるのではなく、地域に詳しい金融機関などが情報を持ち寄って地域での重要度や貢献度を判定し、トップダウン的に支援すべきではないか」と提案している。

カテゴリー:3.11大震災・断面

「3.11大震災・断面」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧