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【川俣・無防備の戸惑い9】町独自に想定し対策 国、県の不備教訓に

原子力災害に備え、川俣町が独自にまとめた2つの計画案の冊子

 東日本大震災から丸1年に差し掛かる3月上旬、川俣町は向こう10年間の町復興計画をまとめた。
 24年度からの重点事業の中に、1つの項目が掲げられた。「町地域防災計画の見直し」。その内容を示す部分には「防災計画に『原子力災害対策編』を追加する」との表現が書き込まれた。
 町長の古川道郎(67)は「東京電力福島第一原発事故は国や県が想定した範囲を大きく超えた。原発の状況を考え、独自の計画が必要だと考えた」と説明する。

■10キロ圏の外側
 原子力安全委員会が示した防災指針で、防災対策の重点地域(EPZ)は半径8~10キロが目安とされた。
 県地域防災計画は、指針に沿って「原発から半径10キロにかかる行政区ごと」に、重点地域を決めた。福島第一原発の場合、10キロ圏内の自治体は立地町の大熊、双葉、隣接の富岡、浪江の合わせて4町だった。各町はそれぞれの地域防災計画に原子力災害対策を盛り込んでいた。
 福島第一原発から川俣町の町境までの最短距離は約33キロ。防災指針で10キロ圏とされる重点地域から遠く離れている。このため、町の地域防災計画には原子力災害対策が必要ないとされた。
 町外からの6000人を超える避難者、町独自の放射線量の測定、住民の自主避難...。福島第一原発事故は、原子力災害への備えを求められていなかった町を、過酷な状況に追い込んだ。

■避難先を示す
 古川が原子力災害対策の取りまとめを職員に指示したのは、震災から5日目の3月15日だった。
 2カ月後、町災害対策本部と町議会の全員協議会に2つの資料が示された。原子力災害の応急対策計画と、町民の避難計画の原案だった。
 福島第一原発事故を教訓に、事故の段階を(1)安全上重要な機器が故障した(2)制御棒の挿入による原子炉の非常停止ができない(3)原子炉を停止するすべての機能を喪失した-の3つ段階に分けた。
 それぞれの段階で、災害対策本部の設置や避難指示などの対応を定めた。飲料水や飲食物の摂取制限の条件、安定ヨウ素剤の予防服用規定なども盛り込んだ。
 避難計画は「町外への避難が必要となった場合、会津地方を目指す」と、行き先を明記した。
 福島第一原発事故で、浜通りなどからの避難者が114号国道に集中したことを受け、会津地方に向かう経路は地区ごとに分けた。「114号国道を通り福島市を経由」「349号国道を通り二本松市を経由」「349号国道を通り伊達市を経由」など6つのルートを掲げた。

■指針の見直し
 福島第一原発事故によって、原子力安全委員会の防災指針に対する批判が高まった。委員会が今年3月にまとめた指針の改定案では、30キロ圏は事故の進展に応じて避難する「緊急防護措置区域」とした。50キロ圏は自宅での屋内退避が中心となる「放射性ヨウ素防護地域」とした。
 福島第一原発から最も離れている福田地区は、原発から約52キロの場所にある。改定案の地域指定を町に当てはめると、町内のほぼ全域が「放射性ヨウ素防護地域」に含まれる。
 県や立地地域の原子力防災対策は、国の「統一規格」に沿って進められてきた。福島第一原発事故は、その規格の不備を浮かび上がらせた。
 原発事故は収束したと言える状況にはない。発電所内には溶けた燃料や使用済み燃料が残っている。廃炉作業が完了するまでには長い歳月がかかる。
 町は防災指針の改定を待って、2つの計画案を町の立場で練り直し、地域防災計画に正式に加える。
 古川は「改定後の指針の避難想定区域は30キロ圏だと思うが、町は地域防災計画に独自の対応や避難計画を盛り込む」との考えを示している。(文中敬称略)

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