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【川俣・無防備の戸惑い12】国の除染方針に不満 根強い「山林先行」の声

除染説明会で配られた資料に目を通す山木屋地区自治会の大内会長(右)=4月26日、川俣町保健センター

 川俣町山木屋地区の計画的避難が昨年5月に始まってから丸1年が過ぎた。2度目の初夏を迎え、田畑の雑草が昨年以上に目立つ。野生動物が時折、道路を横切る。
 「人が住まないことが当たり前になってしまう。地域の再生が難しくなる前に早く除染しなければならない」。地区の自治会長vを務める大内秀一(64)は、そう思いながらも国の方針に不満を抱く。
 国は3月から5月にかけて、大内ら自治会役員や住民を対象に除染方針の説明会を開いた。今後2年間は住宅周辺を中心とした除染を進める考えを示し続けた。これに対し、住民からは住宅周辺に先行して山林の除染を求める声も根強い。
 11の行政区ごとに開いた今月19、20両日の説明会。住民は「山林が多い山木屋は、都会とは違う。住宅周辺の20メートルだけを除染しても意味がない」「除染して線量が下がらなかったら、下がるまで何度も繰り返してほしい」などと厳しい意見や要望を国の担当者に突き付けた。
 説明会で細かい作業工程に質問が及ぶと、国の担当者は「しっかり取り組みたい」などと述べるにとどまった。「それでは答えになってない」。住民はいら立ちを募らせた。

■四季の風情
 大内は自宅から約8キロ離れた避難先の借り上げ住宅で暮らす。地域安全パトロール隊員として地区をつぶさに見回りながら、日に日に荒れ果てる故郷の現実に、幼いころに見た風景を重ね合わせる。
 道端には清流が流れ、夏は裸になって遊んだ。イワナやヤマメも捕った。春はタラの芽やウド、秋はキノコ...。移り変わる四季に身を預ける生活だった。
 中学校を卒業後、山木屋地区に隣接する浪江町津島地区で大工見習いとして4年間、働いた。親方宅に住み込みで技術を覚えた。20歳で地元に戻って独立した。新築や増改築などの注文を受け、堅実に仕事を続けてきた。
 東京電力福島第一原発事故は、住民が築き上げた歴史や文化、美しい自然を放射性物質にさらした。
 「住宅の鍵を取り換えてほしい」「物置を木の板でふさいでもらいたい」。昨年4月、計画的避難区域に指定されると、自宅を離れる住民の依頼が相次いだ。「俺たちの故郷が、なぜ」。大内はそんな疑問を口には出さないまま、黙々と仕事をこなした。

■区域再編
 大内ら住民は除染の行方と同時に、計画的避難区域の見直しにも大きな関心を寄せる。
 隣接する飯舘村も計画的避難区域に指定されたが、村は20の行政区ごとに避難区域を再編する案を住民に示し、話し合いを進めている。村の案によると、村内は帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域に分かれる。
 町長の古川道郎(67)は「除染のスケジュールが見えた段階で、区域の見直しを進める」と説明する。
 「安心して生活できる状態になってから帰りたい。ただそれだけなんだけどな...」。大内は、そうつぶやいた。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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