東日本大震災

「連載・再起」アーカイブ

  • Check

高台に新たな絆を 土地3ヘクタール提供 農家民宿や水耕栽培

農家民宿を計画する自宅前で古里復興への意欲を示す星さん

■津波被害 原町の金沢地区 元市職員 星巌さんら推進組織
 東日本大震災の津波で大きな被害を受けた南相馬市原町区の金沢地区で、高台に新しい地域をつくる住民らの取り組みが動きだす。震災後、長く避難所運営に携わった元市職員の星巌さん(56)が中心となって来月、推進組織の「いちばん星南相馬プロジェクト」を結成し、避難者の生活再建の場となる用地を確保。農家民宿や水耕栽培も始め、古里の復興につなげる。地区民7人が津波で亡くなっており、星さんは「郷土のために今できることをしていきたい」と誓っている。
 「いちばん星南相馬プロジェクト」は公益活動を展開する一般社団法人とする。避難所運営の仕事を通して結び付きを強めた県外内の会社経営者や主婦ら6人で構成する。
 星さんは自宅周辺に約12ヘクタールの土地を所有している。仮設住宅や借り上げ住宅などで暮らす避難者の生活再建の場として、高台にある3ヘクタール分を用意する。市が進める避難者の防災集団移転促進事業に協力し、要請があれば用地を提供する。
 農家民宿は築約160年の星さんの自宅を改修して始める。水耕栽培では野菜などを育て、約1・2ヘクタールの水田も活用して農業体験を企画。敷地内の山林を公園として整備し、県内外の多く人が集える場にする。地区内に移り住んだ被災者らの働く場も生み出したい考えだ。
 退職金などを活動資金に充て、民間財団の補助事業なども活用しながら早期の事業化を目指している。
 星さんは市小高区税務課長で今年2月に退職した。在職時の昨年3月から12月まで10カ月間にわたって避難所運営に携わり、多い時には市内をはじめ浪江、双葉両町の住民約800人の苦しい避難生活を支えた。避難所で互いに親交を深めた避難者は、しばらくすると仮設住宅や借り上げ住宅へ散り散りになった。そんな光景を目にするうちに「人と人との絆を保つには新しいコミュニティーづくりが必要」との思いを強くした。
 震災や東京電力福島第一原発事故などで早期退職する市職員が相次ぐ中、現在の職にとどまるべきか悩んだ。寒空の下、避難者と一緒に古里の将来を語り合った夜、月のそばに一番星が輝いていた。「これからは違った立場で市の復興を応援しよう」と決心し、定年まで5年を残して新たな一歩を踏み出した。記憶に残る一番星をプロジェクトの名称にした。
 星さんは「古里を次代に引き継ぐため地道に取り組んでいきたい」と話している。

■「活用を検討」 南相馬市
 南相馬市は防災集団移転促進事業を活用し、津波の被害にあった市内約600世帯を27カ所に集団移転させる計画を進めている。
 いちばん星南相馬プロジェクトが用意する土地について、市の担当者は「3ヘクタールで約50戸の住宅が造成できる。活用を検討したい」としている。

カテゴリー:連載・再起

「連載・再起」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧