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【相馬野馬追 通常開催】伝統継承へ人馬奮闘 「胸張り出陣」 雲雀ケ原除染、練習場共有し調整

南相馬市原町区の深野仲山トレーニングセンターで手綱を握る佐藤さん(右)

 国指定重要無形民俗文化財「相馬野馬追」開催まで2カ月余りに迫り、相双地方では1000年以上の伝統を誇る文化の継承に向けて人々の奮闘が続く。昨年は中止された神旗争奪戦、甲冑(かっちゅう)競馬が2年ぶりに復活する7月の本番に向け、南相馬市原町区の雲雀ケ原祭場地では除染が進む。一時、北海道日高町に移した馬は全て古里に戻った。ただ、乗馬の練習場所確保や観光客の受け入れ態勢などに課題が残る。

■県内外から集結
 野馬追には例年500騎ほどの騎馬武者が出場してきた。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故を受け、規模を縮小した昨年は82騎となった。
 今年は2年ぶりの通常開催を目指しており、雲雀ケ原祭場地で神旗争奪戦、甲冑競馬が催される。避難指示解除準備区域などを抱える同市小高区の小高郷、警戒区域となっている双葉郡の標葉郷の両騎馬会は県内外の避難先から集結する予定だ。
 南相馬市では野馬追に出場する馬が震災の津波により十数頭流された。さらに、原発事故の影響で餌の入手が困難になったため昨年、馬産地としてつながりがあった北海道日高町の牧場に52頭を預けた。26日までに全てが戻った。
 しかし、相馬野馬追執行委員会は、震災の津波で馬や武具、馬具などを流失した上、避難生活を送る騎馬会員の中には出場を見合わせるケースがあり、今年は例年の7割ほどの出場にとどまるとみている。
 南相馬市原町区の山あいにある深野仲山トレーニングセンター。「くらから腰を離すな。馬に任せろ」。センター代表で30年余の野馬追出場経験がある佐藤徳さん(59)が、初陣を目指す若手を指導する声が響く。
 佐藤さんは2年ぶりの出場に向け、愛馬「グラスワールド」との呼吸を合わせる。「震災で家族や馬などを失った人は少なくない。出場できない人の無念を晴らすよう胸を張って出陣したい」と気合を入れた。

■失われた砂浜
 南相馬市鹿島区の烏崎海岸には例年、地元の北郷騎馬会を中心に野馬追に出場する馬が波打ち際を駆ける光景がある。柔らかい砂浜は馬への負担を減らし、騎馬技術を高める上で欠かすことのできない場所だった。だが、津波で砂浜は削り取られ、一部は地盤沈下したまま。海岸に向かう道路は震災の影響で通行困難な状況が続く。
 北郷騎馬会は騎馬会員が自宅に設けた馬場を別の会員に開放し、馬の調教に取り組んでいる。会員は「人馬が全力疾走する砂浜は古里の宝だった。自分たちができることからやっていくしかない」と前を向いた。
 相馬野馬追の5つの騎馬会でつくる五郷騎馬会は昨年12月、文化庁に烏崎海岸の整備などを求める請願書を提出した。しかし、国が応える動きはない。
 五郷騎馬会長で小高郷騎馬会長の本田信夫さん(72)は「震災と原発事故で馬と共に暮らしてきた生活が奪われた。震災前の環境を1日も早く取り戻したい」と訴えた。


【背景】
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故のため、相馬野馬追は昨年、規模を縮小して実施された。観光客数は例年の5分の1にも満たない3万7400人ほどだった。今年は通常開催を目指し、7月28、29、30の3日間、南相馬市原町区の雲雀ケ原祭場地をメーン会場に開く。6月9日の相馬野馬追執行委員会で、今年度の実施概要が正式に決定する。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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