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【太陽光発電用地】「適地」は沿岸部 公用地、農地利用に課題 関係自治体「復興が先」の声も

県は最大発電量1000キロワット級の大規模太陽光発電施設(メガソーラー)の整備地として、平たんで日射量が多い太平洋沿岸部を「適地」としている。候補地バンク事業の開始を前に沿岸部の市町に用地選定の協力を求めているが、現時点で前向きな回答は得られていない。避難区域を含め、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復旧・復興に向けた土地利用計画自体が固まっていないことが背景にある。

■ドーム320個分
 県の再生可能エネルギー推進ビジョンでは原発1基分、一般家庭30万世帯の使用量に相当する発電量100万キロワット分の太陽光発電施設を平成32年度までに県内に整備するとしている。メガソーラーの立地に必要な用地は1・5ヘクタール。100万キロワット分を確保するには計算上、計1500ヘクタールの用地が必要となる。東京ドーム約320個分に当たる。
 しかし、公有地は仮設住宅建設など復旧関連事業に使われていることから活用しにくい。相馬市企画政策課の担当者は「被災した住民の生活支援が最優先。太陽光発電などの土地利用まで検討が及ばない」と明かす。
 南相馬市新エネルギー推進課の担当者は「本格的な復旧・復興に向けた作業はまだ先の話。現時点でどの土地が再生可能エネルギーに利用できるかなど判断できない」と話す。

■民有地に着目
 県は遊休農地や被災農地、民間の宅地分譲地、未利用の工業用地などの民有地にも着目する。この中で特に注目しているのが津波の被害を受けた農地だ。
 県によると、被災農地は5923ヘクタールで、メガソーラー約4000カ所分の用地に相当する。ただ、農地を活用する場合、複数の地権者の合意を得る必要がある。担当者は「多数の地権者がかかわる土地を集約するのは容易ではない」と厳しい見通しを示す。
 未分譲地などの民有地についても、まとまった用地をどう確保するかが課題となる。

■競争激化
 山梨県は県有地2カ所計23ヘクタールに施設を誘致した。7月にも建設が始まり、発電量は1万キロワット超となる見通しだ。同県の担当者は「全国で誘致が激化している。公用地の確保も含め、さらなる対応を検討する」と意気込む。
 長野県は昨年10月に「マッチング窓口」を開設し、県や市町村の公有地を事業者に紹介している。これまでに9カ所の候補地を用意し、事業者との交渉を進めている。同県の担当者は「民有地の集積は難しいが、公有地は広大な用地を確保しやすい」と指摘する。
 本県は山梨、長野両県と違い、公有地が仮設住宅の建設地になっていたり、震災復旧関連で使われていたりして提供が難しい。
 県内では、東芝などの大手が今年1月に南相馬市へのメガソーラー建設に向けた調査事業を受託したほか、地元企業などが500キロワットの施設建設を目指している。川内村ではドイツの企業が整備構想を持つ。
 県はこうした太陽光発電事業への進出の動きを全県に広げるため、候補地バンク事業を効果的に活用したい考えだ。しかし、関係者からは「肝心の用地を確保できなければ、構想が絵に描いた餅に終わることにもなりかねない」との懸念の声も漏れる。

【背景】
 原発事故を受けて県は原子力に依存しない社会づくりを目指し、復興計画に「再生可能エネルギーの飛躍的推進」を掲げ太陽光や風力、小水力、バイオマスなどの発電施設の集積に取り組んでいる。平成26年春には、産業技術総合研究所(産総研)が郡山市に再生可能エネルギーに特化した研究施設を開設する見通しで、技術開発も進むとみられる。一方、政府は7月に再生可能エネルギーの「固定価格買い取り制度」を始める。太陽光発電の電力1キロワット時価格は42円の見通しで、風力(発電量20キロワット以上)の23円10銭の1.8倍。高い収益性が見込めるとして、大手企業などに施設用地を求める動きが加速している。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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