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【安全への問い掛け12】3県知事 異例の提言 政策全般の見直しに主眼

橋本首相(左から2人目)に提言する福島・佐藤(左)、福井・栗田(右から2人目)、新潟・平山の各知事=平成8年1月

 福島・佐藤栄佐久、福井・栗田幸雄、新潟・平山征夫-。3県の知事が首相官邸に出向いた。平成8年1月23日。応対したのは首相の橋本龍太郎だった。
 3県に立地する原発の発電出力は全国の上位を占める。「3県の知事が直接、首相に申し入れるのは、初めてのことだった」。当時、本県の原子力安全対策課長を務めた音高純夫(66)は振り返る。
 発端は1カ月余り前に起きた高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の事故だった。7年12月8日、「もんじゅ」で冷却材のナトリウムが漏れた。原発立地道県による原子力発電関係団体協議会は、国に情報開示や指導監視の徹底を盛り込んだ要望書を提出した。ただ、その内容は主に各道県の担当者レベルで調整された。

■凝縮された問題
 「協議会の要望程度では足りない。3県で国に対して行動を起こすべきです」。「もんじゅ」が立地する福井県の担当課長から音高に電話が入った。「3県でですか」。前例のない話に音高は驚きを隠せなかった。
 原子力発電関係団体協議会は、立地道県が足並みをそろえて国などに対して要望活動を繰り広げてきた。「月並みな要望だけでは、もんじゅ事故どころか、原発の問題自体がうやむやになるのではないか」。3県の担当者に共通した思いだった。
 「知事3人が物を申せば、国に対して相当のインパクトがあるはずだ」。音高は福井県の提案に納得した。
 3県の担当者は、他の立地道県に対して「3県には原発の諸問題が凝縮されている」との趣旨を説明し、異例の取り組みへの了解を得た。
 「行動するなら、事故から時間を置いては意味がない」。音高は秘書課に知事の日程を問い合わせた。新年会や公務で既に埋まっていた。だが、事故をきっかけに国の原子力政策に地方が問い掛けなければならない。日取りは間もなく決まった。

■説得を警戒
 3県は、もんじゅ事故の前から、プルサーマル計画の受け入れなどの情報を事務レベルで交換していた。「もし、プルサーマルを実施するならば、1つの県が単独で了解はできない。受け入れるなら3県同時だが、プルサーマルをすぐに始めるのはまだ難しいだろう」。共通の難題を前に歩調を合わせ、いざという時の協力体制を確かめ合っていた。
 3県知事による提言は、プルサーマルを含む核燃料サイクルなどの原子力政策全般の在り方を見直すことを主眼とした。原案は3県の担当課同士でひそかにファクスでやりとりし、文面を練り上げた。
 音高は、県幹部から事前に国に原案を見せないように厳命を受けていた。「県幹部は、われわれ事務レベルの担当者が国に説得されるのではないかと懸念していたのだろう」。音高は、地方が国のエネルギー政策に一石を投じようとする職責の重みを感じ取った。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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