東日本大震災

「3.11大震災・福島と原発」アーカイブ

  • Check

【安全への問い掛け13】国が円卓会議を設置 県、体質的欠陥を指摘

福島市で開かれた原子力政策に関する懇談会=平成9年7月

 平成8年1月23日、県原子力安全対策課長の音高純夫(66)は首相官邸の控室にいた。福島、福井、新潟3県の知事と首相の橋本龍太郎との会談が終わるのを待った。
 3県は福井県に立地する高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の事故を受け、国の原子力政策に対する原発立地地域の要望を提言の形で出した。会談は十分程度だったが、音高は本県の佐藤栄佐久ら三知事が満足そうな様子で、会談の部屋から出てきたことを覚えている。

■数学と算数
 音高は平成7年4月に原子力安全対策課長に就いた。初めての部署だった。平成に入ってから、東京電力福島第二原発3号機の再循環ポンプ事故や、福島第一原発共用プール設置などの課題が相次いだ。
 音高は事務系の職員として県に採用された。資源エネルギー庁や東電の担当者と話し合うために専門的知識を身に付けることは必要だが、音高は常に肝に銘じていたことがあった。「専門家が『数学』をやるとすれば、われわれは『算数』を心掛ける。県民の立場で考え、分かりやすく伝えなければならない」
 3県知事は提言で、核燃料サイクルなどの原子力政策に触れ「国民各界各層の幅広い議論を行い、国が責任を持って国民の合意形成を図ること」を求めた。情報を公開し、国民が意見を言える場を設けるように訴えた。
 また、通常の原子炉でプルトニウムなどを再利用するプルサーマル計画や、バックエンド(放射性廃棄物の処理)対策などの具体的な将来像をはっきりと示すことも指摘した。
 音高は「国が原子力政策を勝手に進めるのではなく、地方に情報を公開し、広く意見を聞くべきだという思いが根底にあった」と提言の意図を説明する。

■成果と課題
 提言の成果は形となって表れた。原子力委員会は3月、原子力政策に国民の意見を反映させる原子力政策円卓会議の設置を決めた。
 5月31日に京都市で開かれた第3回円卓会議には本県知事の佐藤が出席した。佐藤は福島第二原発3号機の再循環ポンプ事故や「もんじゅ」事故を挙げた上で、情報公開や通報連絡態勢の在り方に対して「どこかに体質的な欠陥があるのではないか」と指摘した。さらに「国がバックエンド対策を示さない限り、信頼関係を築くのは難しい」との考えを示した。
 国は円卓会議の他、全国各地で市民参加懇談会、原子力シンポジウムなども企画した。県内でも、8年6月に原発の耐震安全性を考える地域フォーラム(大熊町)、9年7月に原子力政策に関する懇談会(福島市)を開いた。
 9年2月、電力各社でつくる電気事業連合会(電事連)は社長会で、各社のプルサーマルの実施計画をまとめた。翌月、東電は県内の原発での導入を明らかにした。原発にどのような核燃料を使うかを許認可する権限は国が持ち、県は法的に関わることができない。ただ、県と立地町は東電と結んでいる安全確保協定に基づき、新しい燃料の使用を事前了解するかどうかを判断できる。
 県は7月、核燃料サイクル懇話会を設けた。県内で原発が運転を開始してから30年近くが過ぎようとしていた。プルサーマルを含む国の原子力政策に対して本県独自の考え方をまとめる取り組みが始まった。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

「3.11大震災・福島と原発」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧