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【安全への問い掛け15】プルサーマルに慎重 県の不満、不信なお強く

国の担当者(右側)を招いた県核燃料サイクル懇話会の会合=平成10年7月

 県は平成9年7月に設けた核燃料サイクル懇話会を当初、非公開とする予定だった。県幹部職員による内部の"勉強会"と位置付けたためだ。だが、報道機関の関心は高く、初回から公開することに方針を変えた。
 初会合は県庁脇の知事公館で開かれた。講師は京都大の経済研究所長で、教授の佐和隆光。原子力委員会が設けた原子力政策円卓会議のコーディネーターを務めていた。
 「プルサーマル計画や原発増設などの課題について、結論を急ぐ必要はないのか」。副知事の中川治男(79)が質問した。中川は昭和40年代から県の原発立地政策に関わってきた。安全対策を受け持つ保健環境部長のときに、東京電力福島第二原発3号機の再循環ポンプ損傷事故が起きた。副知事就任後には、知事の佐藤栄佐久に代わって東電の幹部と面会することもあった。幹部はプルサーマル計画や、福島第一原発の増設に理解を求めた。
 中川の発言は長年、国や東電に向き合ってきた経験に裏打ちされた、立地県からの根源的な問い掛けとも言えた。
 「国民参加のもとで透明な議論を尽くすことが、回りくどいようだが必要だ」。佐和の答えだった。

■長年の国策
 原子力発電で使われるウラン燃料の一部は、原子炉で使用中にプルトニウムに変わる。新しくできたプルトニウムも核燃料の一部として、そのまま発電に使われている。
 プルサーマル計画は、使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、あらためてウランと混ぜ合わせた新しい燃料(MOX燃料)として、再び発電に使う。「プル」はプルトニウム、「サーマル」は熱を意味する。
 政府は、わが国の原子力開発が本格的に始まった昭和30年代から、核燃料を再利用するサイクル政策を掲げた。高速増殖炉の実用化と、プルサーマル実施が大きな柱だった。県が懇話会を設ける3年前に決まった国の原子力長期計画にも盛り込まれた。
 懇話会設置の5カ月前だった。本県の佐藤をはじめ、福井、新潟の3県知事が首相官邸に招かれた。高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)の事故を受け、1年前に3県は首相の橋本龍太郎に提言し、原子力政策に国民の意見を反映させることなどを求めていた。
 橋本は、あらためて会った3県知事にプルサーマル計画への協力を要請した。「国民的合意形成はまだ図られていない」。3人は慎重な姿勢を示した。

■3点セット
 プルサーマルは国内の研究成果や実績に加え、海外でも豊富な実績があった。「プルサーマル用の燃料を正しく取り扱えば、一般的なウラン燃料と変わらない」。県幹部の中には、技術的な安全性は確認されている、との見方があった。
 しかし、福島第二原発3号機の再循環ポンプ事故、福島第一原発の共用プール問題、高速増殖炉原型炉もんじゅのナトリウム漏れ事故...。技術的な安全もさることながら、県や原発立地地域には、国の原子力政策に対する不信や不満がくすぶり、トラブルや不祥事のたびに表面化した。
 佐藤は懇話会初日、定例の記者会見に臨んだ。「(懇話会で)原子力問題に認識を深めたい」として、懇話会の開催期間中は、東電のプルサーマル計画の申し入れを受けない考えを示した。
 プルサーマルの他にも県には懸案があった。東電が双葉郡で運転している福島第一原発と、広野火発の増設だった。県、立地町、そして東電は、当時「三点セット」と呼ばれた課題に、三者三様の思惑を抱いていた。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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