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【安全への問い掛け16】県と東電 擦れ違い 地元は3点セットに期待

東電の荒木社長にプルサーマル計画の事前了解回答書を手渡す佐藤知事(左)=平成10年11月、県庁

 「国のエネルギー政策に欠かせない」
 「企業誘致が進まない中で、財源確保、雇用確保に原発は必要」
 平成10年2月に開かれた5回目の県核燃料サイクル懇話会には、原発立地町の楢葉・草野孝、富岡・遠藤勝也、大熊・志賀秀朗、双葉・岩本忠夫の各町長が招かれた。住民の安全を最優先した上で、プルサーマル計画や原発増設の推進を訴えた。
 懇話会設置のきっかけはプルサーマル計画受け入れの検討だった。立地地域は、プルサーマルに続き、東京電力が2つの計画を申し入れると受け止めていた。福島第一原発7、8号機と広野火発5、6号機の増設だった。立地地域は、「3点セット」が雇用や地域振興につながると期待した。

■先送り
 10年7月、最終回となる7回目の懇話会には、通産省資源エネルギー庁長官の稲川泰弘が出席し、県が求めた使用済み燃料貯蔵対策などの取り組みを詳しく説明した。
 1カ月後の8月18日、東電社長の荒木浩が県庁を訪れ、知事の佐藤栄佐久にプルサーマルの事前了解願を出した。導入するプラントは大熊、双葉両町に立地する福島第一原発の3号機だった。
 プルサーマルの実施を認めるかどうかの法的な権限は国が握る。県と立地町は東電と結んでいる安全確保協定に基づき、事前に了解するかを判断する。国は法律に基づく安全審査を開始する前提として、東電に対して地元の了解を得るように指導していた。
 東電は同時に申し入れる意向だった原発と火発の増設については先送りした。県が原発増設に慎重な姿勢を取っていることに配慮した形となった。
 佐藤は記者会見で「原発の増設は白紙」と述べた。だが、荒木は「(知事は増設に)特段のコメントはなかったが、否定はしていなかったので、県当局と十分に詰めていきたい」と述べた。原発の増設に関して、2人の言い回しには、擦れ違いがのぞいた。
 一方、地元の大熊、双葉両町には東電副社長の友野勝也が赴き、大熊・志賀、双葉・岩本の各町長に事前了解願を提出した。「増設が棚上げされたままでは受け取るわけにはいかない」。岩本は一時、拒否する考えを示したが、最終的に申し入れを受けた。ただ、表情は硬いままだった。

■県議会の大勢
 県議会は10月19日、全員協議会でプルサーマル計画を審議した。正式な議案ではないため、協議会の形を取った。主に技術的な説明を受け持ったのは当時の県原子力安全対策課長の高倉吉久(69)だった。
 「データはあるか」「万一のトラブルの場合は」。議員からは次々と質問が浴びせられた。「技術的な部分は専門家でも理解するのは難しい。なるべく分かりやすくすることを心掛けた」。高倉は用意した冊子を議員に示しながら、1つ1つ丁寧に説明した。
 最大会派の自民と第二会派の県民クラブは容認する姿勢を示した。社民、公明は慎重な立場を取り、共産は反対した。県議会の結論は「議会の大勢としては計画の導入に特に問題はない」だった。

■12年後
 11月2日、県は大熊、双葉両町とともに東電に対してプルサーマル計画の事前了解を通知した。全国初だった。
 県は条件を付けた。プルサーマルで使うMOX燃料の品質管理の徹底、取り扱い作業員の被ばく低減、使用済みMOX燃料の長期展望の明確化、核燃料サイクルの国民理解の推進―の4項目だった。高倉は「4項目は特別な内容ではないが、国策に対し、県が主張できるのはこれぐらいしかなかった」と顧みる。原発の安全管理に法的な権限のない県や立地地域の限界だった。
 プルサーマルはその後も、紆余(うよ)曲折が続いた。本県でプルサーマルが始まったのは、12年後の平成22年9月。東日本大震災で福島第一原発事故が発生する半年前だった。(文中敬称略)

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