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【安全への問い掛け17】安堵の直後 つまずく 東海村の臨界事故に不安

プルサーマル用のMOX燃料が入った容器を輸送船からトレーラーに移す作業=平成11年9月27日、東京電力福島第一原発専用港

 大熊、双葉両町に立地する東京電力福島第一原発の専用港に1隻の輸送船が入った。平成11年9月27日午前5時27分、日の出とほぼ同じ時刻だった。船には、3号機で予定しているプルサーマル計画用のMOX燃料32体が積まれていた。
 「やっとここまで、たどり着いたか」。当時、県原子力安全対策課長を務めていた高倉吉久(69)は現場に立ち会いながら、それまでの取り組みに思いをはせた。
 県は9年7月に幹部職員による勉強会「核燃料サイクル懇話会」を設置し、プルサーマルをはじめ国のエネルギー政策を原発立地県の立場で検討した。懇話会には専門家や国の責任者、原発立地地域の代表者などを招いた。
 プルサーマルは、原発の使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、あらためてウランを混ぜ合わせたMOX燃料を造り、再び発電に使う。大学や大学院で原子力を学んだ高倉は、県と東電が結んでいる安全確保協定などに基づき、技術面を中心に安全性の確認などに当たった。

■MOX燃料搬入
 福島第一原発に運び込まれたMOX燃料はベルギー製で、南アフリカ回りで2カ月をかけて輸送した。原発への搬入作業は、巡視船やヘリコプターなどが厳重な警戒を続ける中で、約11時間に及んだ。
 入港は当初より5日、遅れた。台風と秋雨前線で、海が荒れたためだ。波が高く、輸送船は入港のタイミングを見計らっていた。
 「順調に作業を終えることができて、正直、ホッとしている。安定した運転に心掛け、県民に理解していただけるような努力をしていく」。作業終了の記者会見で、福島第一原発所長の二見常夫(69)は安堵(あんど)の表情を浮かべた。

■憤る県幹部
 東電は約4カ月後にMOX燃料を原子炉に入れる計画を立てていた。だが、その通りには進まなかった。
 MOX燃料が福島第一原発に到着する2週間ほど前だった。関西電力高浜原発(福井県)で使うMOX燃料の検査データに改ざんがあることが分かった。
 東電の燃料はベルギー製で、関電の燃料は英国製だった。県は「関電の燃料は手作りだが、東電の燃料はコンピューターで品質が管理されている、と東電から報告を受けた」として、使用の許認可権を持つ国の対応を待つ方針を示した。
 さらに、プルサーマルの実施どころか、国の原子力政策を揺るがす事故が起きる。福島第一原発にMOX燃料が到着した3日後の9月30日だった。茨城県東海村のウラン燃料加工施設「JCO東海事業所」で臨界事故が発生した。作業員2人が死亡し、660人余りが被ばくした。
 隣接する本県でも、県民は不安を募らせた。保健所で検査や相談を受ける人が相次いだ。「どうなっているんだ。国や電力会社が言っている事を素直に信じていいのか」。県幹部は憤りをあらわにした。
 国策である核燃料サイクル政策の柱の1つであるプルサーマル計画は、実施を目前に、つまずいた。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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