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【安全への問い掛け19】県、燃料データに不信 プルサーマル直前で延期

佐藤知事にプルサーマル計画の延期を伝える東京電力の南社長(右)=平成12年1月、県庁

 東京電力の歴代の社長は、毎年正月を迎えると、知事や、原発と火発がある立地町の町長にあいさつに赴くことが、いつのころからか、慣例のようになっていた。
 何事もなれば、文字通り、正月のあいさつだが、平成12年は違っていた。1月7日に県庁を訪れた社長の南直哉は、MOX燃料の使用を当面、見送ることを知事の佐藤栄佐久に報告した。南は「第三者機関による検証も含めて徹底的に調査する」と述べた。1カ月後に発電開始を予定していた福島第一原発3号機でのプルサーマル計画の延期を意味していた。

■2度の改ざん
 前年の11年、関西電力の高浜原発(福井県)で使用する予定だったイギリス製のMOX燃料に関して、データが改ざんされていたことが判明した。しかも、改ざんは2度にわたって発覚した。1度目は11年9月、2度目は12月で、燃料の検査データだった。
 2度目は本県の12月定例県議会の開会中だった。「国が安全と言ったのに、捏造(ねつぞう)があったということは重大な問題。どんな検査をしたのか」。佐藤は取材などに対して不信感をあらわにし、国の原子力政策も非難した。
 県議会も改ざん問題を取り上げた。2度目の判明を受け、福島第一原発3号機のプルサーマル延期を求める請願や、国に対する意見書案の取り扱いをめぐり紛糾した。
 当時、県議を務めていた斎藤卓夫(71)=福島市=は「議員や、各会派が持っている原子力政策に対する考え方に相違があり、思いも揺れていた」と振り返る。
 10年、プルサーマル計画導入の是非を全員協議会で審議した際、斎藤は議長を務めていた。安全を前提に、エネルギー政策や地域振興などの幅広い観点での議論を心掛けた。「福島第一原発事故が起きた今、あらためて考えると、自分を含め、全ての議員は原子力を本当に理解していたのだろうか」。自問自答を繰り返す。
 現役を退いた今は県森林・林業・緑化協会の副会長を務め、植樹や緑の少年団の活動支援などに取り組む。「"うつくしま、ふくしま"として知られた古里を、再生、復興する一助になれば...」と、その思いを語った。

■危機感
 12年1月、南は県庁から双葉郡に向かった。各町にプルサーマル計画延期を伝えるとともに、東電の事業への協力を求めた。各町長は「国民感情を考えれば妥当だ」「残念だが、仕方がない」などと理解を示した。ただ、「福島第一原発の増設は、プルサーマルと切り離して早く進めてほしい」「核燃料サイクルが滞るのを懸念する」などと注文を付ける町長もいた。
 1年後の13年2月、プルサーマル、原発と火発の増設をめぐって、県、立地町、東電の三者にあらためて意見の食い違いが表面化した。東電は電力需要の伸び悩みなどを理由に、原子力を含む、火力、水力など全ての発電所の新増設を原則として3年から5年間、凍結する方針を発表した。唐突な変更に、発電所の立地を地域振興策の大きな柱としてきた県や立地町は強い危機感を抱いた。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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