東日本大震災

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待望の魚介次々販売 県内販売再開を消費者が応援

タコの加工品を手に取ったり、試食したりする買い物客=福島市・コープマートいずみ

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後初めて本県沖の漁獲物が県内の店頭に並んだ25日、地元の相馬市では消費者の応援ムードが広がり、完売する店舗が相次いだ。福島市内でも多くの市民が買い求め、好調な滑り出しとなった。本格操業への課題を抱えながらも、漁協関係者は「安全性を一層アピールして本県漁業の復活につなげたい」と決意を新たにしている。
 この日に出荷されたのは相馬沖で捕獲され、放射性物質検査で不検出となったミズダコの足約430キロ・頭約110キロとヤナギダコ約57キロ、ツブ貝約85キロ。相馬市内ではヨークベニマル相馬、相馬黒木両店、キクチ相馬店、あべ魚店などでタコ、ツブ貝の加工品を販売し、多くの店舗が売り尽くした。
 「地元の物はおいしいので待っていた。魚が中心の食生活なのでとてもうれしい」。ヨークベニマル相馬黒木店でヤナギダコを購入した市内塚部の主婦島崎優子さん(70)は久々の本県水産品を手に満面の笑みを浮かべた。市内磯部の自宅が津波被害に遭い、市内の民間アパートで暮らす主婦荒弥生さん(52)は「地元の味を食べさせたい」と、千葉県に避難している姉に送る分も購入した。
 相馬市の道の駅「そうま」には南相馬市原町区の無職笹崎光夫さん(66)が駆け付け、ミズダコを買い求めた。地元は原発事故の影響が色濃く残ったままで、「復興への明るい兆しになれば」と願った。
 流通関係者によると、卸値は震災前の6~7割程度で、店頭では相場の半値程度で販売された。採算度外視の価格で販売した店舗もあったという。
 相馬原釜魚市場買受人協同組合長で丸六水産社長の佐藤喜成さん(59)は「ようやく踏み出した最初の一歩。少しずつでも着実に歩みを進めたい」と言葉に力を込めた。
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 相馬市の松川浦漁港では市と相馬双葉漁協が試食会を開いた。会場入りした立谷秀清市長は「漁業の復活を信じて一緒に頑張りたい」と話し、若泉征三財務・復興政務官は安全性のPRに努めることを約束した。

■福島などでも好評
 商品は福島市などでも販売された。「家族全員で味わいたい」と、市内の日下部愛さん(74)は近くのコープマートいずみでタコを購入した。自分も農業をしており、風評被害に苦しむ漁業関係者の気持ちはよく分かる。「県内漁業が活気づくことを願っている」と話した。
 コープふくしまは市内の3店舗で販売し、いずれも完売した。担当者は「ぜひ販売したいと申し出た。応援したいという消費者の思いを生産者に伝えたかった」と説明する。
 ヨークベニマル執行役員鮮魚部シニアバイヤーの有馬善二さん(58)は販売先の相馬市内の店舗を回り、「仕入れ量がもっと増えれば、他の店舗でも取り扱いたい」との意欲を高めた。
 郡山市の水産物卸業・郡山水産は26日、タコ18キロを市内の市場で競りにかける予定だ。担当者は「しっかりとした値段が付いてほしい」と期待を寄せる。福島市の福島水産物商業協同組合理事長を務める長沢明さん(60)は「放射性物質が出なければ、地元の旬の水産物を食べたい人は多い」と話し、今後、積極的に仕入れる考えを示した。

■本格操業 信頼構築が鍵
 震災前の相馬双葉漁協の水揚げ高は県内トップの年間60億~70億円規模だった。今回出荷されたタコやツブ貝以外にも、東京・築地など各地の市場にカレイやヒラメなどの鮮魚、特産品のズワイガニ、ホッキ貝、ノリなどを出荷してきた。
 本格操業に向けては風評被害の払拭(ふっしょく)などの課題が依然残る。東京都水産物卸売業者協会の担当者は「福島県産の水産物に対する消費者の抵抗感は強い」との見方を示す。県内でも厳しい見方は出ており、いわき市の卸関係者は「消費者に受け入れられるかどうか分からない段階では仕入れられない」と明かす。
 県漁連、相馬双葉漁協は今後も、放射性物質が不検出という結果などを示し安全性をアピールする考えで、関係者は「しっかりと信頼を積み上げていくしかない」としている。

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