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【安全への問い掛け20】東電、突然の凍結表明 県「地域を翻弄」と反発

平成16年7月に営業運転を開始した東京電力広野火力発電所5号機。東電の方針変更によって開始時期は当初より遅れた

 「広野火発5号機 運転開始延期へ」
 平成13年2月3日付の福島民報の紙面は、広野町に建設中の東京電力広野火力発電所5号機の運転開始時期が遅れる見通しを報じていた。
 5日後の8日、東電は原発を含め、発電所の新増設を凍結する方針を都内で正式に発表した。その日の夕刻、東電常務・立地環境本部長の二見常夫(69)は、富岡町で開かれた双葉郡内の町村長、町村議会議長との意見交換に臨んだ。電力需要の伸び悩みや電力小売り自由化などの動きに触れ、原発や火発の増設時期の見直しの背景を伝えた。
 「町の財政に影響が出る」「住民の雇用問題にもつながる」。町村長らは、突然の方針変更に対する懸念を訴えた。
 福島第一原発7、8号機の増設が計画されていた双葉町の町長、岩本忠夫は「原発増設、火発増設、プルサーマル計画を"三点セット"として求めてきた。延期されぬよう郡内が一体となって努力しなくてはならない」と強調した。

■県民の電気
 東電が記者会見で発表したころ、知事の佐藤栄佐久は福島空港の利用促進などを目的に韓国を訪れていた。県は「新規電源開発だけでなく、核燃料サイクルを含めたエネルギー政策全般を見直す必要がある」とのコメントを出した。
 2日後、仙台空港に到着した佐藤は、報道陣に取り囲まれた。発電所新増設の凍結方針について「1年ぐらいは(県民の)皆さんと相談して考えなければならない」と慎重に言葉を選んだ。「国はバランスの取れた電力供給、事業者はコスト、そして私たちは地域の立場で考えていく。(本県の原発は)県民の電気をつくっているわけではない」と不快感を表した。
 県は間もなく開会した定例県議会で、2年3カ月前に事前了解したプルサーマルの受け入れを、見合わせることを明らかにした。

■引き金
 東電の方針変更から2カ月後。県職員だった小山昭(70)は人事異動で、発電所立地などのエネルギー政策や地域振興策を担当する県企画調整部長に就いた。
 原発や火発の立地は、県民の雇用や、県と市町村の税収などに大きな役割を果たしてきた。発電所の新増設の凍結は、懸案のプルサーマル計画や発電所の新増設にとどまらず、県の地域振興策が大きな影響を受けることを意味した。小山は「当時の凍結表明には、東電なりの考えがあったのだろうが、結局は東電にとっては立地地域の振興は後回しだったのだろうか」と振り返る。
 小山とともにエネルギー政策を担当した元県職員は「またも地域は翻弄(ほんろう)されるのか、と感じた」と、当時の怒りを思い起こす。石炭の生産で脚光を浴びた全国各地の産炭地域が、国のエネルギー政策の転換で衰退していった歴史が念頭にあった。「国の一方的な政策を受け入れるだけでいいのか。県そのものが変わってしまうのではないかという危機感があった。県には、積もりに積もった不信感もあった。東電の凍結宣言は、知事の怒りの引き金を引いてしまった」
(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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