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【安全への問い掛け21】国との話し合い平行線 県、検討会で政策見直し

エネルギー政策の見直しに当たって開かれた「県民の意見を聴く会」。原発への賛否両論が相次いだ=平成13年5月

 県が平成13年2月に打ち出したプルサーマルの見合わせや、エネルギー政策の見直しは県内外に波紋を広げた。
 翌月、資源エネルギー庁原子力政策課長の原山保人らが県庁を訪ねた。「国の政策を止めるわけにはいかない。(プルサーマルは)一刻でも早くと思っている」
 応対したのは、発電所の立地や地域振興策を担当する県企画調整部長の大庭誠司。「プルサーマルは当面、あり得ない。立地県の立場で考え方を見直したい」。大庭は旧自治省(現総務省)に採用された職員だったが、当時は本県に在籍し、原発立地地域の思いを訴えた。
 国と県の担当者同士の協議は、正式な会議などを除き、報道陣に公開されないことが多いが、面談は報道陣の取材を認める異例ともいえる形で進められた。県と国の双方がそれぞれの主張を繰り返し、話し合いは平行線をたどった。国側は資源エネルギー庁の部長と副知事との会談を申し入れたが、県側は要請に応じなかった。

■波及への懸念
 当時、青森県六ケ所村で、使用済み燃料の再処理工場が17年の操業開始を目指して準備を進めていた。また、電力業界は既に本県以外の原発でもプルサーマルを実施する計画を明らかにしていた。
 全国に先駆けてプルサーマルに事前了解した本県の原発で、プルサーマルが始まらなければ、プルサーマルそのものはもちろん、国の核燃料サイクル政策にも大きな影響を及ぼす可能性があった。
 プルサーマルには、使用済み燃料の再処理によって取り出されたプルトニウムを使う。プルサーマルの見通しが立たなければ、再処理工場に使用済み燃料を運び込む意義は薄れてしまう。再処理工場が立地する青森県からの反発も予想された。
 さらに、全国の原発の立地地域もプルサーマルの受け入れに難色を示すことも想定された。
 資源エネルギー庁の課長が県庁で語った「一刻でも早くと思っている」との発言に対して、県側は「国策が止まりかねないことへの懸念があったのではないか」と受け止めた。

■賛否両論
 13年5月、県は、国のエネルギー政策全般を検証する「エネルギー政策検討会」の設置を正式に発表した。知事を会長、副知事と出納長を副会長とし、県警本部を含む各部局長がメンバーとなった。「国は国としてのエネルギー政策、東電は会社として経営方針、県は県の立場で、エネルギー政策を見直そうという意図だった」。検討会のまとめ役となった当時の県企画調整部長、小山昭(70)は説明する。
 県は検討会の初会合を前にした5月31日、県庁脇の知事公館で「県民の意見を聴く会」を開いた。学生や主婦、元教諭ら12人がテーブルを囲み、意見を述べた。
 「浜通りの発電所は国民の経済を支えている」
 「新エネルギーが主力になるまでは当分、原子力に頼らざるを得ない」
 「後世代に毒を残してはいけない」
 「地域や県だけが利益を受けることは必ず対立を生む。今のエネルギー消費は果たして正常なのか」
 参加者の1人で、元高校教諭の菅野幸雄(77)は、講師を務めていた県消防学校で募った放射線に関するアンケートの結果を資料として持ち込んだ。「若者の意見を反映させたかった。聴く会は全国でも注目されるニュースで、画期的な取り組みだった」と顧みる。
 「聴く会」をはじめ公募やインターネットなどで寄せられた意見は216項目に上った。小山は「多くの考え方があることが分かっていたが、これほどの数の意見が出されるとは...」と手応えを感じた。
(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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