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城下町 白河で人力車 2日、「新風亭」再開セレモニー 「人生懸ける」

運行再開に向け、人力車を整備する遠藤さん=郡山市

■富岡の遠藤良一さん(57)
 富岡町で人力車を使った観光業を営んでいた遠藤良一さん(57)は7月2日、白河市で運行を再開させる。東京電力福島第一原発事故による避難生活を送る中、「前に進まなければ」と決断した。小峰城をはじめ至る所に歴史的建造物が残る白河市は、東日本大震災や原発事故の影響で観光客が減少傾向。「歴史のマチ白河を新たな魅力で、もり立てたい」。人力車の仕事に人生を懸ける決意だ。
 代々続く農家の遠藤さんは、農業の傍ら、近年は富岡町のサクラの名所「夜の森公園」などで人力車を引いて観光客らに喜ばれていた。人力車を使った観光業は、軌道に乗り始めていたが、事故で状況は一変した。
 妻、母と共に二本松市の避難所を経て、現在は郡山市の借り上げ住宅に暮らす。二本松市のイベントのボランティアとして人力車を引いたことはあったが、7台所有する人力車の出番はほとんどなくなった。
 自宅と田んぼは原発から約7キロの距離にある。古里に戻って農業を再開するのは難しいと思っている。先祖から受け継いだ農地を奪われ、落ち込む日もあった。そんな時、白河市の城下町の街並みを思い出した。
 白河青年会議所が毎年春に開催しているイベントで数年前から人力車を引く機会があった。坂が少なく、歴史的建造物が多い環境は人力車観光には最適だった。「自分には人力車がある。悩んでいても仕方がない。とにかく前に進もう」。気持ちを切り替えた。
 白河観光物産協会を訪ねて協力を求めた。協会は行政の手続きやコース設定、PR活動などさまざまな面での支援を約束してくれた。協会は市内に点在する文化遺産を結ぶ新たな「足」となることに期待を寄せる。
 遠藤さんは家族で白河市内に住まいを移すつもりだ。「よそ者」の自分が新天地で営業活動をするのは簡単なことだとは思っていない。時間をかけて地域に溶け込んでいくしかない。当面は人力車1台で運行するが、徐々に後継者を育てていきたいと考えている。
 2日午前10時半からは市内の城山公園でセレモニーを行う。屋号は町にいた時と同じ「新風亭」。「人力車を市内観光の起爆剤にする」。温かく迎えてくれた白河市の観光に新しい風を吹き込む。

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