東日本大震災

「3.11大震災・福島と原発」アーカイブ

  • Check

【安全への問い掛け22】国に問題点突き付け 県の検討範囲には限界

国の政策に対して、県が疑問や課題を示したエネルギー政策検討会の「中間とりまとめ」

 東京電力福島第一原発事故などを受け、国の原子力委員会は21日、原発で発電を終えた使用済み燃料の取り扱いについて「全量再処理」「全量地中廃棄」「再処理と地中廃棄の併存」の3種類の評価を示した。
 わが国は半世紀余りにわたり全量再処理の方針を掲げてきた。福島第一原発で予定されたプルサーマル計画も全量再処理を前提にした核燃料サイクル政策の中に位置付けられている。委員会の報告は国策に大きな方向転換を求めることを意味した。

■自問自答
 核燃料サイクル政策の在り方は、平成13年に、県が初会合を開いたエネルギー政策検討会の大きなテーマの1つだった。
 検討会は、県幹部と学識経験者との意見交換の形で、月2回程度の割合で開いた。
 事務局を担当した県職員は苦労の連続だった。原子力に関する文献や新聞などを集め、講師に招く専門家の発言や著作を調べた。講師には、福島第一原発事故の後にも新聞やテレビに登場している研究者もいた。
 「原子力発電のコスト(費用)は、他の発電方法に比べて安い」「核燃料サイクルは資源の節約になる」...。それまで国や電力会社が示してきた内容と、検討会での講師の発言、集めたデータなどを照らし合わせた。県の立場で疑問点を1つ1つ浮かび上がらせた。
 「国が出している情報は都合のいいことばかりではないのか。県は今まで何をよりどころに情報を発信してきたのだろうか」。かつて、県が自ら県民に説明してきた内容も取り上げ、職員が自問自答を迫られることさえあった。

■四面楚歌
 「そんなことを調べてどうする」「そのデータはまだ調査中で出せない」。原子力の推進派といわれる人々や団体からは、見えない力を感じさせる発言も寄せられた。
 当時の県幹部に対して、政府の担当者から頻繁に電話がかかってきた。「会ってもらえないか」。相手は用件を詳しくは明かさない。だが、その言い回しから、県が進めているエネルギー政策の見直しやプルサーマル計画の凍結などに対して、国側が翻意を求めて説得しようとする意図がうかがえた。
 県と国は予算面などで、同じ行政機関同士のつながりがある。県職員として、国の担当者から「会ってほしい」と頼まれれば、むげに断ることはできない。だが、会えば、政府の説明を聞かざるを得ない。当時、県幹部の間では「国の担当者に会わない。国からの電話には、なるべく出ない」という暗黙の取り決めがあったほどだ。「四面楚歌(そか)の状態だった」。検討会の運営に携わった元職員は、そう表現した。
 検討会は半年ほどで論点や検討課題をいったん整理した。そして、1年余りにわたる22回の会合の成果を「中間とりまとめ」の形で報告書にまとめる作業に着手した。
 だが"壁"も見え始めた。「一流といわれた専門家を招いて議論は深めたが、最終的には国が持っている権限の大きさや法律的な枠組みもあって、県が検討できる範囲には限界があった」。事務局を担当した元職員は思い起こす。

■中間とりまとめ
 14年12月、報告書は冊子の形で出来上がった。タイトルは「あなたはどう考えますか?~日本のエネルギー政策~」。冊子の下には「福島県エネルギー政策検討会 中間とりまとめ」の文字が記されている。
 その内容は、県としての疑問点を示し、その疑問点の背景にある客観的な事実、国の見解、講師の意見、電力会社の見解、各種データなどを記している。総じて、疑問点と論点を並べた形となった。
 「われわれは県として問題を提起した。県が結論を出すのではなく、国に投げ掛けた形だ。国が原子力を国策として進めているのだから、結論は国が出すべきだ」。中間とりまとめの際に県企画調整部長を務めた菊地俊彦(66)は説明する。
 県は「中間とりまとめ」で示した疑問点や論点を国の関係機関などに説明し、さまざまな機会を捉えて、意見を交換した。しかし、県にとって納得のいく返答は国から寄せられなかった。検討会に関わった県の担当者は「『中間とりまとめ』から10年近くになるが、国は県に正式な回答を出していない」と受け止めている。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

「3.11大震災・福島と原発」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧