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【郡山で県内初「吸引式」】住宅地の除染 多難 新型機器足りず 汚泥処理、住民同意も

郡山市池ノ台地区で始まった吸引式高圧洗浄器によるモデル除染

 郡山市は28日、市内池ノ台地区で県内初の吸引式高圧洗浄器による住宅約100戸のモデル除染を開始した。効果を確認後、周囲に放射性物質が飛散しない特徴を生かして除染への住民の理解を取り付け、年度内に約2万5000戸の完了を目指す。ただ、洗浄器の数が足りない上、除染で出た汚泥の処理、自主避難者の同意取り付けなど課題は多く、計画通りに進むかどうかは不透明だ。

■待ちに待った
 郡山市は住宅密集地が多く、通常の高圧洗浄器を使った場合、汚染水が周囲の住宅などに飛び散るリスクがある。吸引式は、除染に伴う汚染水が周囲に飛散することへの住民の不安解消などを目的に導入した。池ノ台地区のモデル除染を7月27日までに終え、8月から第1弾として市内約2万5000戸の除染に取り掛かる。年度内に完了させる計画だ。
 「放射性物質が周囲へ飛散すると、せっかくの除染が逆効果になる」。初日のモデル除染を見守った原正夫市長は吸引式の利点を強調する。除染が始まった住宅に住む山ノ井昭平さん(84)も「待ちに待った除染。この方法だと、周囲に気を使わないで済む」と歓迎する。

■1日2~3戸
 ただ、住宅の除染に使える吸引式は市内で10台ほどしかない。処理能力は1台当たり1日2、3戸程度で、年度内に2万5000戸を計画通り除染するには著しく不足している状況だ。市内で最多の7台を所有する業者は「最低でも50台はないと対応できないのではないか」とみる。
 吸引式洗浄器は1台300万~1000万円以上と高額だ。瓦屋根の洗浄には先端部を柔軟に変形できるタイプの機器が必要で、量産体制はできていないという。
 市によると、機器は原則として業者が確保するが、現時点で国の補助はない。市がそろえる場合は国の補助対象になる可能性があるという。
 しかし、市の担当者は「数年で使用しなくなることも想定される。それを考えれば、厳しい財政状況下で高額な機器を購入することが適当かどうか...」と悩む。その上で「国が吸引式への補助を明確に打ち出せば機器も普及し、除染への住民の理解も得られやすくなる」と訴える。

■仮置き
 住宅の面的除染を計画通りに進める上では、除染で出た汚泥の処理も大きな課題だ。
 洗浄後に吸引した水は業者が放射性物資を除去した上で処理する。屋根や雨どいなどから出た汚泥は住民の希望に応じて、それぞれの住宅の敷地内に埋めるか、特殊容器に入れて敷地内に仮置きする。その後、中間貯蔵施設に移す計画だが、中間貯蔵施設の建設自体が宙に浮いている。市内の50代女性は「除染は急いでほしいが、汚泥がずっと敷地に置いたままになりかねない」と複雑な表情を浮かべる。
 市外に自主避難した住民の同意取り付けなども不可欠だ。3月現在で5600人近くが避難しており、市の担当者は「全員の同意を得るには相当な時間がかかる」と多難な見通しを示した。

【背景】
 郡山市は昨年4月に全国に先駆けて学校校庭の表土除去を実施した。その後も公園や公共施設など、市が管理し人が集まる場所の表土除去を進めた。住宅は今年2月に市内池ノ台で1戸のモデル除染を行い、吸引式高圧洗浄器で屋根部分の空間放射線量が約36%減少した。今後は100戸の面的除染の効果を検証し、業者を通して4年間で計10万戸の除染を目指している。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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