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再編/小高からの報告(45)危ぶまれる本格除染開始 決まらぬ仮置き場

旧警戒区域外の南相馬市原町区の北萱浜にある災害がれきの仮置き場。小高区にも同様の施設が必要になる

 住民の帰還実現の大前提はもちろん除染だ。 
 南相馬市小高区金谷の居住制限区域にある自営業遠藤裕さん(63)の自宅玄関の放射線量は毎時3.30マイクロシーベルト。「集落の3分の1は帰るつもりだが『住むのは無理』と思っている人もいる。とにかく早く除染してほしい」と訴える。
 南相馬市の旧警戒区域は環境省が直轄で除染を行う。4月に公表した実施計画では今年度に比較的線量の高い西側の山沿いの地域、来年度に線量が低めの沿岸部と、2年間で完了することにしている。しかし、除去した土の仮置き場が決まらない。
 環境省は直轄で除染する南相馬(原町区南部・小高区)、田村、楢葉、川内、飯舘の5市町村の実施計画を公表しているが、南相馬だけ仮置き場のめどが立っていない。担当する環境省福島環境再生事務所放射能汚染対策課の安浪望係長は「遅れているのは事実。除去土の行き先が決まらない段階で住民から除染の同意を頂けるとは思えない。予定した9月の本格除染スタートは現段階で難しい」と語る。
 なぜ南相馬で設置が遅れているのか。
 環境省も市も管理などの面から場所は少なくしたい。想定は2、3カ所。除去土の袋を積み重ねることで縮小の可能性はあるものの当面約50ヘクタールもの面積が必要とされる。直轄の他の市町村では公有地で適地が見つかったが、南相馬にめぼしい土地はなく、山林では伐採や造成に手間が掛かる。絞り込めば候補地は平地にある民間の農地になった。
 ばらばらに避難している地権者に連絡を取るのも、集まってもらうのも一苦労だ。仮置き場設置の考え方や構造を説明すると、「除染を進めるには誰かの協力が必要」と理解はしてもらえる。しかし地権者も近隣住民も考え方はさまざま。「自分だけでは決められない」というのが本音だ。中間貯蔵施設整備が進まないまま、仮置きが引き延ばされる懸念も当然ある。

 震災がれきの仮置き場も求められている。 
 旧警戒区域には、4月までの立ち入り制限で手付かずだった津波被害のがれきが18万3000トンあるとされる。地震の家屋被害の調査が進めば全壊、半壊、雨漏りなどで居住不能とされる住宅が小高区で約1000棟出てくるとみられる。がれきを収集し、木質、コンクリート、金属、その他の可燃物などに選別する場所が必要だ。
 環境省と市は沿岸部の原町区に1カ所、小高区に3カ所の候補地を示し、住民や地権者に説明している。造成開始までこぎ着けたのは小高の1カ所だけ。住民の同意に加え、壊れた堤防の改修、地盤沈下した土地の埋め立てが必要とも指摘されている。
 環境省と市はがれき減容のため仮設焼却炉も必要という認識で一致しているがこちらも何も進んでいない。
 「必要性は分かってもらえても、自分の家の近くは困るという『総論賛成 各論反対』」。難しい交渉に当たっている市の佐藤幸雄生活環境課長は困惑の表情だ。
 仮置き場の候補地に近い小高区浦尻の行政区長を務める小野田武久さん(64)は「何も変わらない風景にがっかりする。『絶対ダメ』と言う人もいるが、放ってもおけない。折り合いを付けなければならないが...」とこちらも悩む。
 住民が求めていたがれき仮置き場のモニタリングポスト設置は何とか認められた。さらに安心の材料となるのは何なのか。国も市も考えなければならない。

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