東日本大震災

「連載・原発大難」アーカイブ

  • Check

再編/小高からの報告(47)従業員の住宅不足難題 再開模索する企業

多くの大手が撤退した中、操業再開を目指すタニコー小高工場

原発事故後、大手事業所は相次いで撤退を表明した。 
 南相馬市によると、小高区では1650人の雇用が失われたという。
 水晶デバイス国内トップメーカーのエプソントヨコム(本社・東京都日野市)は、平成22年4月に保原事業所を統合したばかりだった小高区の福島事業所を昨年10月に閉鎖した。従業員320人は東北地方や長野県の工場に配置転換した。大日本印刷の関連会社DNPファインケミカル福島は従業員約100人の小高の工場を閉鎖。今年4月、栃木県栃木市に新工場を着工した。従業員120人の藤倉ゴム工業小高工場は、生産拠点を集約した新工場が16億円を掛けて22年10月に完成したばかりだったが、埼玉県加須市に機能を移転した。
 各社とも従業員の雇用を維持しながら、厳しい国際環境で競争を続けなければならない事情があり、事業再開の環境が整わない中では厳しい判断をせざるを得なかった。
 4月16日の区域再編によって、帰還困難区域を除いて事業再開が認められたが、動きは鈍い。地震や津波で施設や地下管が損傷した上下水道の仮復旧は今年度末の予定だ。さまざまなインフラが元通りになるにはまだ時間がかかる。
 小高区外から通うにしても、住宅事情が逼迫(ひっぱく)している南相馬市内で住む場所を探すのは今、不可能に近い。東北電力原町火力発電所の復旧工事に従事しているのは約4500人。がれき処理、さまざまな復旧工事、除染などでもかなりの数の関係者が入っている。国の補助を受けた災害公営住宅が完成するのは来年度末以降のことだ。

それでも何とか操業再開を目指す事業所がある。 
 総合厨房(ちゅうぼう)機器製造販売のタニコー(本社・東京都品川区)は、小高区にある2工場の再開準備を進めている。従業員約250人を解雇せず、福井県や北海道の工場に配置転換して再開に備えてきた。帰還を望む従業員は以前、アンケートで50%台だったが、最近は90%を超えた。工場は地下水、合併浄化槽を使っているため、水とトイレの心配はない。従業員の住宅が難題だが、確保の努力を続けている。市の藤田幸一経済部長は「大きな工場が動くのは復興の大きな力になる。ありがたい」と期待を寄せる。
 事業を再開した工場もある。親和電機代表の本居巳起男さん(66)は3日、小高区田町の自社で操業を再開した。「自分の工場で仕事をするのは気持ちがいい」と晴れ晴れとした顔で話す。夫婦と従業員の3人でモーターの部品を製造する。本居さんの自宅は原町区、従業員の避難先も鹿島区だったのが幸いした。
 小高区の街中に以前の暮らしがない中で、一般住民を顧客にしていた店舗やサービス業の再開はまだ少数だ。それでも、あぶくま信用金庫(本部・南相馬市原町区)は6月4日に小高区役所前の現金自動預払機を稼働。駅前通りにある小高支店の早期再開も目指している。
 店の周辺環境の安全確保など課題もあるが、オンラインの復旧を確認し、清掃も終了して開店を待つばかりの状態にしてある。半沢恒夫理事長は「支店は閉鎖していても、賠償金の預け入れなどで業績を伸ばしている。住民を支えるのが地元金融機関の務め。水、お茶などを持ち込み、一時帰宅した住民を『お帰りなさい』と迎えたい」とその日を待っている。

カテゴリー:連載・原発大難

「連載・原発大難」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧