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【推進と悔恨のはざま3】安全委は「機能不全」 官邸主導で事故対応

原子力安全委員会事務局が入る中央合同庁舎4号館。詰めていた専門家に情報が十分に入らなかった

 原子力安全委員会は東日本大震災の発生から約一時間後、外部の専門家による助言組織の設置を決めた。
 委員会事務局は、助言組織のメンバーである「緊急事態応急対策調査委員」に招集メールを送り、臨戦態勢を整えようとした。だが、助言組織は当初、計画通りには動けなかった。
 「安全委員会の委員5人のうち2人と事務局長が同委員会を長時間不在にしたことによって、安全委員会は、組織としての能力を発揮することが著しく妨げられた」。国会の原発事故調査委員会(国会事故調)は7月5日に出した報告書で、安全委員会そのものの機能不全を指摘した。

■無力感
 原子力安全委員長の班目春樹、委員長代理の久木田豊は首相官邸に常駐した。福島第一原発の1~4号機が相次いで危機的な状況に陥る中、首相(当時)の菅直人らは班目らに直接、助言を求めた。
 専門家である調査委員は官邸から約400メートル離れた庁舎の安全委員会事務局にいた。だが、調査委員が班目と意見を交わしたり、情報を交換したりする機会は、ほとんどなかった。
 日本原子力産業協会理事長の服部拓也(68)は、助言組織の中で「施設・実用発電炉」担当の調査委員の1人として、13日から事務局に詰めた。政府や関係機関などから入ってくる情報を基に、原子力安全委員に技術的な助言を寄せることが主な任務だ。
 「原発事故の直後、調査委員に入ってくる情報は極端に少なかった」。事務局職員は当時の状況を振り返る。
 首相官邸が主導した事故対応は、調査委員に連絡が届く前に次々とテレビで報道された。「後追いの情報しか入ってこない」。調査委員には無力感が漂った。

■手元に図面なし
 服部は東電社員として福島第一原発に3回の勤務経験があり、平成12年6月から2年間、所長を務めた。
 原子力安全委員会の事務局で助言の求めを待ち続けた。福島第一原発の設備状況を確認しようと委員会事務局に原発の詳細な図面を出すよう求めたところ、「備えていない」との答えが返ってきただけだった。
 配管や配線が複雑に入り組む施設の事故対応は、専門的な知識があっても図面がなければ、どの部分をどう手当てするかなどの助言は不可能に近かった。
 助言組織には、国の専門機関や大学、研究機関などから約40人が選ばれていた。国内の英知が結集していたはずだが、服部ら調査委員はその英知を十分に発揮できないでいた。調査委員からは「何のために(安全委員会の事務局に)詰めているのかとすら思った」との声が上がった。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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