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【推進と悔恨のはざま5】備えに現実感伴わず 電源盤に水、ベント難航

水に漬かった福島第一原発1号機の電源盤=東京電力の社内事故調の最終報告書より

 日本原子力産業協会理事長の服部拓也(68)は、東京電力福島第一原発事故が大惨事となった要因の1つに電源盤の冠水を挙げる。「外部から電源車を持ち込んでも、電気を機器類に配分する電源盤が使えなければ、意味がなかった」
 福島第一原発の外部電源と非常用ディーゼル発電機の電力は、高圧と低圧の電源盤を経由して各機器に供給される。東日本大震災の津波で、1~5号機の高圧電源盤は全て水をかぶった。
 東電の事故調査委員会(社内事故調)は最終報告書に「仮に外部電源や非常用ディーゼル発電機が機能していたとしても、電力を必要とする機器に供給することができない状況であった」と記した。低圧電源盤も大半が水に漬かり、高圧電源車などの接続可能な場所は限られていた。

■想定の2倍強 
 東日本大震災で福島第一原発に押し寄せた津波の高さは、最大で約15.5メートルあったとされる。電源盤は海抜10メートル程度にあるタービン建屋の地下を中心に設置されていた。大量の海水が押し寄せ、電源盤は使用不能に陥った。
 東電は原発事故の発生前の平成21年、当時としては最新の海底地形と潮位観測データを踏まえて、津波の高さを最大6.1メートルと評価し、対策を講じてきた。だが、今回の津波はその2倍を超えた。
 服部は12年6月から2年間、福島第一原発の所長を務めた。だが、電源盤が地下を中心に設置されていることに不安を感じたことはなかった。
 服部が所長を務めていた時期は、昭和35年のチリ地震津波の潮位を踏まえ、3.5メートルが最大規模と考えられていた。「10メートルを超える津波が襲来する考えに至らず、当時は十分な余裕があると思っていた。なぜ想定しなかったのかと指摘されれば、反省するしかない」と語る。

■高かった線量 
 「現実感を持った備えではなかった」。服部は昨年3月12日の1号機の水素爆発に関し、東電が格納容器の気体を大気中に放出するベントの操作に手間取ったことを悔やむ。
 ベントは2つの弁を開く操作が必要で、1つは開いたが、別の1つは設置場所の線量が高く、作業員がたどり着けなかった。空気圧縮機(エアー・コンプレッサー)の接続などを経て、12日午後2時半にベントを成功させた。その約1時間後、1号機が水素爆発した。
 国会の事故調査委員会の最終報告書は、当時の状況を「操作は思いの外に難航した。結局、エアー・コンプレッサーを手配するなど、さらに時間が割かれ、ようやく遂行できたのは14時30分であった」と記述した。
 服部は、緊急事態が発生することを考慮し、作業員が対応しやすい場所に設備を整えていれば、迅速にベントの作業ができたと考える。「リアリティーを持って訓練し、設備を整備すべきだった。それが十分ではなかった」(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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