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【推進と悔恨のはざま12】安全の優先度に課題 過酷事故対策多様化を

「社内事故調」の最終報告書を説明する東京電力の幹部=6月20日、福島市

 国会の事故調査委員会(事故調)は東京電力福島第一原発事故を「明らかに人災」と結論付けた。
 また、津波対策について、国会事故調は「想定外だったとするのは責任回避の方便」と指摘し、政府の事故調は「保安院も東電も放置した」と判断した。「津波は想定外」とする東電の社内事故調の見解との違いが際立った。
 「そうした要素が背景にあったことを十分に反省しなければならない」。福島第一原発所長と、東電常務を務めた二見常夫(69)は、悔恨の表情を浮かべた。
 
■合理化の陰で 
 東電などの大手電力会社は電力供給を地域ごとに、ほぼ独占的に担っている。契約している家庭や企業に必ず電力を送るという義務を負うと同時に、地域独占によって電力会社間の競争は、ほとんどない時代が続いた。
 各社は「最高品質の電力」をうたい、電力の安定供給のために、原子力・火力・水力などの発電部門や、送電部門などの設備に投資した。掛かった経費は原則として、電気料金を計算する基礎の1つとされた。
 だが、段階的に進められた電力の自由化が電力会社の経営に変化をもたらす。電力会社が目指したのは、経営の合理化だった。「東電は『普通の会社』へと、かじを切った。無駄を省き、品質の良い電力を安く提供しようとの考え方だ」。二見は当時を振り返る。
 合理化には事業の優先順位の選択が必要とされた。二見は、ここに東電が抱えた問題を垣間見ていた。「国民にライフライン(電気)を提供する公益事業として、どこまで普通の会社になればよいのか。その基準があいまいだったのではないか」
 合理化する上でも、削れないのが安全対策だった。例えば、地震対策と津波対策のどちらを優先するのか、両方を同時並行で進めるのか-。「安全対策を怠ってまでコストダウンしたとは思わない。ただ、安全確保の範囲、優先順位の問題はあったかもしれない」

■上司の言葉 
 二見は駆け出しの東電社員のころ、上司から「怖いもの知らずになるな。原子力に携わる上では臆病ぐらいでちょうどいい」と教えられた。
 東電は第三者から指摘を受けていた大津波に対する防護策を具体的に進めるまでには至らなかった。結果として最悪の事態を招いた。二見は今、上司の言葉をあらためてかみしめる。
 「少しでも役に立ちたいとの思いで書いた」。二見は福島第一原発事故の経緯、分析などを1冊の著書にまとめた。その中で、「3つの多様化」を提案した。
 キーワードは電源、熱を逃がすヒートシンク、そして水源。これらの多様化こそが過酷事故への備えになると説く。
 電源喪失を起こす危険性は津波や地震のみならず、テロや火災、山崩れなど多岐にわたると指摘する。変電所や送電設備の耐震性、ケーブルの地中化などを検討すべき、と訴える。
 復水器や残留熱除去装置などヒートシンクへの海水や空気の利用、水源をダム・河川水・海水などに拡充することも必要だ、と主張する。
 二見は、福島第一原発事故から何を学ぶべきかを世界に伝えることが自らの人生最後の務めだと感じている。(文中敬称略)
 =第10部「推進と悔恨のはざま」は終わります=

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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