東日本大震災

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避難詠んだ短歌自費出版 小高の田中さん

 福島県南相馬市小高区の田中英敏さん(66)は12日、東京電力福島第一原発事故を受けて避難を続ける日々の思いをまとめた文集「あの日から無にして空の日々」を自費出版した。昨年10月に同市原町区の借り上げ住宅に移り、避難生活で31文字の短歌として書き留めた100点のメモを中心に写真を添えて時系列に整理した。
 田中さんは約30年間、福島第一原発で大手ゼネコンの安全担当として勤務していた。事故を受けて、家族で南相馬市と福島市の親戚宅や避難所、旅館、現在住んでいる借り上げ住宅など7カ所の避難先を転々とした。
 震災当時、福島第一原発にいた田中さんは「事務本館屋上塔屋はひっくり返り 人々転がり叫びて出ずる」と現場の様子を表現し、避難所の体育館では「気兼ねして何度も通う夜トイレ 眠れぬ他人の枕元行く」「故郷の夢より覚める朝なれど 鉄骨の梁スレートの屋根」とした。2次避難所の旅館では「朝風呂し写経などして始まれど 悪口雑言尽きぬ夕暮れ」とやり切れない胸の内をつづった。
 文集はB5版でフルカラーの125ページ。民報印刷で200部制作し、親戚や知人に配った。田中さんは「震災で家族を亡くした人の気持ちを思うと自分の苦労は大したことじゃないかもしれない。それでも多くの人が空虚な思いを抱え、避難生活を続けている。当時の記憶をとどめ、前を向いて生きていきたい」と話している。

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