東日本大震災

「連載・再起」アーカイブ

  • Check

還暦のきょう"味"再び 「周りを勇気づけたい」 都路から避難の船引で

移転新築した店でオープンに備える渡辺さん(左)。右に辰浩さん、辰二さん

■レストラン「ホットハウス」経営 渡辺辰夫さん
 田村市都路町の渡辺辰夫さんは休業中のレストラン「ホットハウス」を60歳の誕生日を迎える25日、避難先の同市船引町で再開する。「都路や双葉郡の住民の憩いの場にしたい」。約1年半ぶりに調理服をまとい、還暦の再出発を切る。
 旧都路村出身。双葉高を卒業後に都内のレストランで料理人として働き、帝国ホテルのシェフから指導を受けた。村を東西に走る288号国道がバイパス化された昭和54(1979)年に亡き父の誘いで帰郷し、国道沿いに店を構えた。
 ビーフシチューなど本格的な洋食を味わえると遠方からも客を集めた。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故により、半径20キロ圏内からわずか数10メートルにある店は休業に追い込まれた。
 避難後は都路町商工会長として賠償請求手続きなどに携わってきたが、長年培った料理への愛着は捨て切れなかった。「借金してでも店を開こう」。知人に紹介されたショッピングセンターの一角に出店を決めた。
 再開費用約4000万円のうち、県の補助金で賄ったのはごく一部。店にあった調理機器の大半は避難の影響で故障するなどし、買い直した。長年共同経営してきた弟辰二さん(57)に加え、横浜市のホテルで修業していた次男辰浩さん(26)をスタッフに迎えた。
 「避難先での事業再開は難しいが、一歩踏み出すことで周りを勇気づけたい」と渡辺さん。開店を前にお盆休み明けからは関係者向けのパーティーなどが入り、連日、厨房(ちゅうぼう)に立つ。「誕生日にフライパンを振れる幸せをかみしめたい」。久しぶりの心地よい疲労感とともに、働く喜びを感じている。

カテゴリー:連載・再起

「連載・再起」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧