東日本大震災

「3.11大震災・断面」アーカイブ

  • Check

【いわき・がれき本格焼却】高線量灰どうする 南部、保管限界迫る 北部は開始めど立たず

いわき市南部清掃センターに運び込まれた震災がれき

 いわき市は、19日に市南部清掃センターで始まった震災がれきの本格焼却を「復興に向けた第一歩」とし、復興の妨げになっている廃棄物の早期処分を目指す。ただ、国の処分場設置が不透明な中、焼却灰のうち煙をフィルターで処理した後に残る、放射性物質濃度が高い飛灰は仮置き場が決まらず、施設敷地内に保管するしかない状況だ。敷地は生活ごみの飛灰で既に圧迫されており、早ければ今年度内にも保管場所に限界がくる。一方、市北部清掃センターでは灰保管への住民不安から本格焼却開始のめどは立っていない。

■敷地を圧迫
 いわき市泉町の市南部清掃センターに19日、次々と震災がれきが運び込まれた。舘典嗣市環境整備課長は「がれきがなくなれば、市民の精神的再建につながり、復興が加速する」と強調する。
 この日は埋め立て処分も始まり、がれき処理に一定の道筋が立った。しかし、飛灰の行き場はないままだ。放射性物質が1キロ当たり8000ベクレルを超える焼却灰は国の責任で処理することになっているが、処分場はいまだ決まっていない。このため、飛灰は清掃センター敷地内に一時保管するしかない。
 がれき焼却が始まる前から取り扱ってきた生活ごみの飛灰も一部が1キロ当たり8000ベクレルを超えているため保管対象となっており、敷地を圧迫している。南部清掃センターが現在保管している飛灰は約3300トン。がれきを燃やすことで飛灰の量はさらに増える。今後は1日当たり約8.8トンを新たに保管しなければならず、今年度内で敷地がいっぱいになるという。
 センターがある下川区の江尻幸男区長(69)は飛灰処理に不安が残る中、焼却を了解した理由について「がれきを背負って生活するのは住民の負担になる。1日も早く片付けることが優先」と話した。

■住民に不安
 同市平にある市北部清掃センター周辺の住民は、市が飛灰の仮置き場を施設外に設置することをがれき焼却の条件として提示している。現在、生活ごみを燃やした飛灰の保管量は約1500トン。今月中で敷地内に収容できなくなる。現在は敷地内に新たな保管場所を設ける工事を急ピッチで進めている。
 神谷地区区長協議会の木村徳夫会長(68)は「がれきを焼却すること自体には反対しない。ただ、飛灰の仮置き場が決まらなければ住民を不安にさらすことになる。条件が整わなければ、焼却を認めないという考えは変わらない」と語った。

■「出口」決まらない
 日ごとに増える飛灰。市は震災がれきの処理を平成25年度末までに完了させるとしている。しかし、今年度内に仮置き場を造らなければ北部清掃センターの焼却開始が遅れ、南部清掃センターも処理が滞る恐れがあり、間に合わない可能性が出てくる。
 設置場所について市の担当者は「市有地、民有地、国有地、県有地...、全て検討対象だ」とし、複数箇所への設置も含めて用地選定に当たっていることを明かす。ただ、国の処分場設置計画が明確でないため、「半永久的に飛灰が仮置き場に置かれるのでは」という住民の不安が拭えないことが、設置の妨げになっているという。
 鈴木秀幸市生活環境部長は「飛灰の『出口』が決まらないとどうにもならない。国にはスピード感を持って進めてほしい」と求めている。

■国に処理代行要請
 いわき市以外の浜通りの自治体は震災がれきの焼却処理をまだ本格的に始めていない。一般廃棄物の震災がれきは市町村に処理をする義務があるが、がれきの量が膨大であるため、単独での対応は難しいのが実情だ。
 相馬市と新地町は国に処理代行を要請している。国は地元に仮設焼却施設を建設中で、来年2月に本格的な焼却に入る予定。
 南相馬市は布などの一部のがれきは既存施設で焼却を始めているが、本格的な焼却に入るため、今後、国に処理代行を要請する方針だ。一方、市内の旧警戒区域から出た震災がれきは国が直轄で処理する。
 焼却施設やがれきの仮置き場の設置場所を決めるには住民理解を得るのが難しいなど課題がある。県は「市町村それぞれの課題に対応した支援を進める」(生活環境部)としている。
 中通りや会津地方では震災がれきを家庭ごみと一緒に焼却処理している。


【背景】
 いわき市の震災がれきは、今後取り壊す予定の建物などから発生する分を含めて約70万トンに上る見通し。処理別の内訳はリサイクルが約56万トン、埋め立てが約10万トン。残りのリサイクルできない木くずや廃プラスチックなどの可燃物約4万トンを焼却処理する。市の南部・北部両清掃センターで年間に焼却する可燃ごみは約11万トンで、その4割近くに当たる。今年に入って市が測定した南部清掃センターから出た飛灰の放射性物質は1キロ当たり約6000~1万2000ベクレル。2月に震災がれきを混ぜて7日間実施した試験焼却では同約6800~8500ベクレルだった。

カテゴリー:3.11大震災・断面

飛灰の詰まった袋が大量に積まれたいわき市北部清掃センターの敷地

「3.11大震災・断面」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧