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【来月から18歳以下医療費無料】県外避難者への対応限界 「県内に住民票」前提 増える業務 市町村は職員増検討

18歳以下の医療費無料化を前に課題について説明する鈴木理事

 10月1日に始まる県の18歳以下の医療費無料化制度の対象者は、住民票が県内にあることが条件で、県外に住民票を移した保護者らからは県に柔軟な対応を求める声が上がる。一方、県内の市町村は業務量が増えるため臨時職員を増やすなどの対応を検討している。

■一線 
 「ぜひ子どもの医療費を全額助成してほしい」。県が東京電力福島第一原発事故による避難者の多い新潟、山形両県で意見交換会を開く。そのたびに県避難者支援課の担当者には保護者らから切々とした訴えがぶつけられる。「なぜ住民票を県外に移したら対象にならないのか」
 原発事故により子育て世代が県外に移るケースが相次ぐ中、県が復興の柱に位置付けるのが「日本一、生み育てやすい県」。その実現に向けた施策の柱が医療費無料化だ。県民の県内定着、県外避難者の帰還促進を目指すのが制度の趣旨だけに、基金を運用する県保健福祉部の関係者は「住民票と生活拠点を県外に移した場合でも助成が続けば、県民の県外流出を後押ししかねない」と一線を引く。
 一方、避難者の声を聞く県避難者支援課は意見交換会で母親らに趣旨を説明し、頭を下げて理解を求めている。現場を回る担当者は「就労や就学など事情によって住民票を移さざるを得ない人もいる。とてもつらいが、現時点では制度上、限界がある」と胸の内を吐露する。
 県によると、県外避難者約6万人のうち、18歳以下は1万8000人程度(今年4月1日現在)。どの程度、住民票を移したかは把握し切れていない。

■人手不足 
 郡山市は今月まで独自の制度で入院については小学6年生以下、通院は小学3年生以下を医療費無料化の対象としてきた。県の制度導入により、対象者は2万人増え約6万人となる。
 受診者の増加に伴い、医療機関から届く診療報酬の請求書処理などに時間と人手を取られると踏む。現在は9人態勢で対応する考えだが、業務が膨れ上がれば臨時職員を増員することも検討しており、市子育て支援課は「原発事故以降、健康不安を抱える市民への対応に職員は奮闘しているが、さらに業務が増えれば負担は大きい」と頭を抱える。
 喜多方市では対象者がこれまでの1.6倍の約8000人に増える。市は受給者証の交付に合わせて、適正な診察を呼び掛けるチラシを配布する考えだ。
 1日からは基本的に18歳以下の対象者が診療を受ければ初回から無料となるが、県によると、市町村や保険によって手続きが異なる場合があり、診察を受けた医療機関で確認することを勧めている。

背景 
 東京電力福島第一原発事故を受け、県は全額国費による18歳以下の医療費無料化の実施を国に求めたが、国は「新たな国費を出すのは医療制度全体の根幹に関わる」として見送った。県は国からの交付金などを財源とする「県民健康管理基金」で対応することを決めた。3月末、国が行う施策などを定めた恒久法の福島復興再生特別措置法が施行され、国が県の基金に財政支援し、医療費無料化を間接的に支えることが明記された。しかし、交付する金額や期間などは具体的に説明しておらず、見通しも示されていない。

県保健福祉部の鈴木理事に聞く 適正な受診が重要 
 18歳以下の医療費無料化がスタートするのを前に、県保健福祉部の鈴木登三雄子育て支援担当理事は福島民報社のインタビューに応じた。鈴木担当理事は制度継続に向け、十分な財源措置を講じるよう国に強く要望していく考えを示した。
 -都道府県単位の実施は初の試みだ。
 「国でできないなら県独自に実施することが重要と判断した。安心して産み育てられる環境をつくることが本県の復興につながる」
 -医療費は増えると予想されている。
 「対象年齢の拡大や、原発事故後の健康不安の高まりを背景に受診者が増える可能性はある。財源の県民健康管理基金は限られており、医師不足問題もある。適正な受診への協力を県民の皆さんにお願いしたい」
 -福島復興再生特別措置法には国の財政支援が示されているが。
 「県の責任として国から恒久的財源を確保しなければならない。基金への積み増しを求めていく」
 -県外に住民票を移した避難者への対応が大きな課題だ。
 「医療費無料化は市町村が取り組む助成に県が上乗せする方式。現在の制度上、県内市町村に住民票がある県民を対象とせざるを得ないと考えている。理解を求めていくしかない」
 -事務量が増える市町村の準備状況は。
 「全市町村で条例を改正し、システムの改修を終えた。対象年齢拡大に伴い窓口でトラブルがないよう、市町村や医師会を通じて住民、医療機関への周知を徹底している」

カテゴリー:3.11大震災・断面

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