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【避難準備区域解除から1年】住民帰還進まず 除染、生活基盤課題多く 5市町村

 東京電力福島第一原発事故で設定された原発から半径20キロ~30キロ圏内の緊急時避難準備区域が解除され、30日で1年となる。住民の放射性物質に対する不安は根強く、帰還は進んでいない。病院のスタッフ不足、閉じたままの商店など生活基盤の整備も不十分だ。住民からは「生活自体が成り立たない」との声も上がる。

■落ち着けない
 全域が緊急時避難準備区域だった広野町は住宅などの除染が進む。水道などインフラも復旧し、広野小と広野中は二学期から自校での授業を再開した。
 しかし、町民約5500人のうち、町内に戻ったのは1割の500~600人程度にとどまる。子育て世代を中心に放射線への不安があるためだ。いわき市に避難する男性(61)は「家の除染が終わったが放射線量は平常より高い」と不満を漏らす。
 今年1月に帰村宣言した川内村は、住宅などの除染が年内にも完了する見通しだ。ただ、周囲の森林は手つかずの状態で、住宅の除染が済んでも放射線量が比較的高い地域があるという。
 人口約2800人のうち週4日以上、村内で生活しているのは現在、800人程度とみられる。住民からは「放射線を心配し、腰を落ち着けて住む人は少ない」との声も漏れる。
 村は帰還を促すため雇用対策に力を入れる。製造、住宅関連の2社の進出が決まり、新たに1社の立地計画があるという。

■スタッフ不足
 南相馬市では多くの医師や看護師が避難したままで、深刻な医療スタッフ不足が続く。
 旧区域内の原町区にある市立総合病院は基幹型臨床研修病院の指定を受け、臨床研修医を受け入れるなど地域医療の存続に向け積極的に取り組む。
 だが、子育て世代の看護師は避難先から戻ることをためらうケースが多く、人材確保は難航している。来春採用の看護師12人を募集したが、決まったのはわずか6人だ。
 住民の中にも妻子を避難させ夫が1人で生活する家庭が少なくない。原町区の男性(30)は「放射線量を下げ、安心して家族を迎えられる生活環境を整えてほしい」と訴える。

■学校再開せず
 田村市都路町の旧緊急時避難準備区域では、学校や商店などが再開していない。震災前の住民約2600人のうち、自宅に戻ったのは2割強の約600人にとどまる。
 市は区域外の仮校舎などに移転している小中学校3校や幼児施設を、来春から地元に戻す方向で調整している。10月から本格的な除染を進め、進捗(しんちょく)状況を踏まえて年内にも保護者説明会を開き、再開に対する住民の意向を確認する。
 一方、楢葉町は町西部の旧緊急時避難準備区域の除染を進める。旧警戒区域は、8月に避難指示解除準備区域に移行したばかりで、除染をはじめ地震、津波からの復旧作業はこれからだ。
 県避難地域復興局の担当者は「市町村ごとの課題を把握し、国も含めて解決策を協議しながら、住民の帰還を支援していきたい」としている。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故に伴い、政府は昨年4月22日、原発から半径20キロ~30キロ圏内の5市町村に緊急時避難準備区域を設定した。原発事故で緊急事態が発生した場合、直ちに屋内退避や避難ができるよう備えておく地域として、広野町全域と田村、南相馬、楢葉、川内の4市町村の一部が対象となった。原発事故前の区域内の住民は計約5万9000人。昨年9月30日、原発の水素爆発の可能性が低くなるなど一定の条件が整ったとして解除した。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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