東日本大震災

「3.11大震災・断面」アーカイブ

  • Check

【土湯バイナリー発電計画】新たな源泉掘削へ 震災の影響深刻 月内に新会社 申請間に合うか

土湯温泉の源泉施設。隣接した場所にバイナリー発電設備の設置を計画している

 平成26年秋の発電開始を目指す福島市土湯温泉の温泉熱によるバイナリー発電事業で、2つの主力源泉のうち1つが東日本大震災で損壊し、安定給湯と発電に向け新たな源泉の掘削が必要になっている。各旅館などでつくる湯遊つちゆ温泉協同組合は新たな源泉掘削を検討するとともに今月、発電事業の新会社「元気アップつちゆ」を設立する。年度内に発電事業の申請にこぎ着け、再生可能エネルギーによる地域活性化を目指す。

■修復困難
 土湯温泉は地上に噴出する130度を超える蒸気を湧き水で冷やして各旅館などに供給している。震災前は主に毎分750リットルの湧出(ゆうしゅつ)量を誇る16号源泉と同600リットルの1号源泉から給湯してきた。しかし、震災で1号源泉の管が損壊、今年に入って修復困難であることが分かった。
 震災後に旅館数施設が廃業したため、現在は16号源泉と2号源泉(毎分約250リットル)で、必要な毎分1000リットルを確保しているが、発電事業への影響を懸念する声も出ている。組合は源泉の点検や源泉施設の故障などを想定し、「主力源泉がさらに必要」としている。温泉協同組合は1号源泉と同程度の安定した湧出量の確保に向けて、県温泉審議会への掘削申請を含め対応を検討している。

■タイムリミット
 25年の着工を目指すバイナリー発電には、年度内の事業申請の他、設置場所や発電規模などを盛り込んだ詳細な事業計画作成という手続きが山積している。温泉協同組合の加藤勝一理事長は「なんとしても年度内に申請業務を終了させたい」と意気込む。
 国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度は、年度内に申請すれば現行の価格が維持される。地熱(1万5000キロワット未満)の1キロワット時当たりの調達価格は42円で期間は15年となっている。
 このため組合は新会社設立を急ぎ、年度内の経済産業省への事業申請、東北電力との売買契約の実現に向け準備を進める。

■収支と資金
 土湯温泉で進めるバイナリー発電計画では、当面、500キロワットの発電を目標としている。それには出力250キロワットの設備2機の導入で対応したい考えだ。
 バイナリー発電で世界的に実績のある米オーマット社にオーダーメードで発注し、価格は1機3億円余り。設計に半年から1年が必要で、完成まではさらに1年かかるという。
 温泉協同組合はバイナリー発電の他、小水力発電も計画しており必要な資金を約10億円と試算する。このうち1億円程度は国の再生可能エネルギー発電設備導入を促進する補助制度の活用を見込む。出力を8割の200キロワットに設定し、買い取り価格の1キロワット時42円で計算すると、1機当たり年間約7000万円の売電収益が見込める。
 2機を稼働することで約7年で投資回収できる見通しで、加藤理事長は「必要経費を差し引いても収益の見通しが立つ」とする。
 土湯温泉の再生可能エネルギーの取り組みはイメージアップにつながり、全国の自治体や市町村議会などが視察に訪れている。

【背景】
 震災と原発事故の風評被害などの影響で土湯温泉は16軒中、5軒が廃業した。昨年10月に土湯温泉町復興再生協議会(加藤勝一会長)ができ、復興に向けた地熱や水力を利用した再生可能エネルギー開発を掲げた。環境省の補助事業で、1月末からJFEエンジニアリングなどがバイナリー発電の調査を行った。バイナリー発電は温泉の熱や蒸気で沸点の低い液体を蒸発させ、タービンを回して発電する仕組み。源泉段階の余った熱を使うため、各旅館への給湯や湯の成分に影響がないとされている。

カテゴリー:3.11大震災・断面

「3.11大震災・断面」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧