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【巨大津波 遅れた対策5】マップ、避難の参考に 「全町民」拡大は想定外

津波で大きな被害を受けた大熊町の県栽培漁業センター。町を襲った津波の浸水面積は、想定の約4倍に上った=平成23年3月撮影、大熊町提供

 東京電力福島第一原発が立地する大熊町は、原発事故後、会津若松市に役場機能を移した。その一室で、町環境対策課課長補佐の武内佳之(55)は1年7カ月前の「3・11」を思い起こしながら、1枚の地図を見詰めた。町が大震災の3年前に作った津波ハザードマップだった。

■消防屯所の移転
 大熊町のハザードマップは、津波が襲来した場合の浸水範囲や深さ、避難所の位置が一目で分かるようになっていた。
 マップを作るまで、町が津波の災害を予測するすべはなかった。町防災計画に津波災害への対応を記したものの、科学的な解析に基づく被害想定を町独自に出すことは困難だった。「以前は、どこに被害が出るかが分からず、避難場所も明確にできなかった」と武内は振り返る。
 平成19年6月、県が津波の浸水想定区域図を公表したことで、町のマップ作りは一気に進んだ。県の公表から9カ月で完成した。
 町の沿岸部には切り立った断崖が多い。このため、マップで浸水が内陸に及んでいるのは河口がある熊川、小入野、夫沢の三地区を中心とした区域だった。県の想定区域図で、熊川地区は、熊川の河口から1.5キロほど内陸まで津波が遡上(そじょう)する可能性が示されていた。
 これを受け、町は熊川から100メートルほどの場所にあった消防屯所を、約300メートル離れた地点に移した。大震災による巨大津波が発生したのは、移転から間もなくだった。

■全町避難
 「早く逃げてくれ」。熊川地区に駆け付けた町職員が声を張り上げた。
 昨年3月11日、町は国から大津波警報発令の連絡を受けた。防災無線で放送すると同時に、熊川地区に職員を出動させて避難を促した。
 町はこれまで、津波注意報が出るたびに広報し、避難誘導する態勢を整えていた。武内は「地図があったことで、すぐに熊川地区に注意を呼び掛けることができた」と語る。
 マップは、どこに被害が出るかを考える手掛かりにはなった。だが、大震災の津波被害は、マップの浸水想定と比較にならないほど大規模だった。予想された最大の浸水面積は48ヘクタールだったが、大震災での実際の浸水面積は約4倍の推計200ヘクタールに上り、大きな被害をもたらした。
 移転したばかりの消防屯所に浸水被害はなかった。翌日以降の消防団による捜索活動で活用されるはずだった。だが、巨大な津波は町内にある福島第一原発の事故につながった。住民の避難は津波の浸水範囲にとどまらず、1万人余りの全町民に広がった。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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