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【巨大津波 遅れた対策6】1000年単位は研究途上 全貌判明前に大震災

 平成18年、県は本県沿岸の津波浸水想定の検討委員会を設けた。そのころ、茨城県つくば市にある独立行政法人・産業技術総合研究所(産総研)や国内の研究機関が調査していた地震があった。巨大な津波が仙台平野などを襲ったとされる貞観(じょうがん)11(869)年の地震だ。
 大きな津波が海岸に押し寄せると、海岸近くの土砂は浸食され、平野などに運ばれる。長い年月を経て幾重にも積もった地層の中から、過去の巨大な津波の痕跡である堆積物を見つけられないか-。歴史書に記された津波を最新の科学で再現する取り組みだ。
 産総研は平成16年から21年度にかけて、貞観地震の津波の堆積物などを本県や宮城県の海岸沿いで調べた。その結果、本県では、東京電力福島第一原発から半径20キロ圏内にある南相馬市小高区の調査地点で、貞観津波による堆積物と推定される痕跡が見つかった。

■議論の対象外
 1000年余り前の巨大津波は、県の検討委員会で、直接的な議論の対象にならなかった。
 津波対策を進める上では、「最大規模の被害」を考慮することが鉄則とされる。しかし、当時は、貞観地震による津波の規模や浸水範囲の詳細は研究途上であり、その全貌はまだ明らかにされていなかった。
 仮に同じ程度の規模の地震と津波が発生しても、本県の太平洋沿岸部にどの程度の災害をもたらすか、予測は難しい段階だった。
 「被害想定は津波発生時の具体的な避難対策などの防災計画の基本となる。現実的であるべきだった」。18年度に委員会事務局を担当した県生活環境部次長の古市正二(56)は、浸水のイメージを描き切れていなかった貞観津波が議論の俎上(そじょう)に載らなかった当時の基本的な考え方を振り返る。

■検討見直しの方針
 「意図的に貞観の津波を除外したわけではない」。検討委員会の委員長を務めた越村俊一(40)=東北大災害科学国際研究所教授=は、地震の全貌が分かった時点で検討をやり直す方針だったと強調する。
 昨年3月11日の東日本大震災では巨大な津波が太平洋沿岸部を襲った。本県の浸水面積は推計で1万1200ヘクタールに及んだ。委員会の想定結果の5倍を超えた。
 越村は「1000年単位の地震が起きた後では、結果論だが、想定は不十分だったと言わざるを得ない」とつぶやいた。(文中敬称略)

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