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【巨大津波 遅れた対策7】観測データに限界 専門家に悔しさにじむ

津波で大きな被害を受けた浪江町請戸地区周辺。奥には東京電力福島第一原子力発電所の排気筒が見える=平成23年4月撮影

 昨年3月11日、ラジオのニュースは、東日本大震災による巨大な津波の襲来を知らせていた。
 東北大の災害科学国際研究所教授を務める越村俊一(40)はニュースを聞きながら、自らが手掛けてきた津波などの研究に思いを巡らせた。「なぜ、起こりえたんだ...」。胸中には、驚きと不可解さが渦巻く。
 東日本大震災の5年前の平成18年度から2年間、本県沿岸で想定される津波浸水の検討委員会の委員長を務めた。委員会がまとめた浸水想定区域図に基づき、沿岸の市や町は避難場所や避難経路を示す津波ハザードマップを作った。だが、巨大津波の規模はマップの基となった想定をはるかに超えた。

■100年の歴史
 越村は平成16年にインド洋沿岸に大きな被害をもたらしたスマトラ沖地震と津波の研究に携わった。地球上で過去にマグニチュード9クラスの地震が複数回にわたり発生し、甚大な津波被害が生じたことは十分過ぎるほど理解していた。
 東日本大震災の地震はマグニチュード9.0。国内の観測史上最大だった。しかし、日本での科学的な地震観測の歴史は、ここ100年程度といわれる。それ以前の大規模な地震や津波は、地質学的な研究や古文書の記録でしか知り得ない。
 「科学的に全貌を知ることができるデータは100年分程度しかない。その中で考えていたにすぎなかった」。津波工学の専門家として、東日本大震災による津波を予見できなかった悔しさがにじむ。

■反省
 越村は大震災後、主に宮城県内の被災地を丹念に歩き、津波被害の全容を把握する努力を続ける。浸水の範囲や高さを調べている中で、ある事実に気付いた。建物が2メートル以上の高さの津波に漬かると、建物が破壊される確率は急上昇していた。
 その結果を踏まえ、仙台市などの沿岸の自治体が市街地の再生を目指す場合、津波によって2メートル以上、浸水する可能性がある土地に建物を造らないよう訴え続けている。
 越村は海岸技術や、津波予測技術などをテーマにした国の検討組織のメンバーを務めている。被災した本県をはじめ宮城、岩手の3県でも県や市、町の復興計画・防災対策などの取りまとめに携わっている。
 「これまで、研究者は論文を書き、学術的な成果を挙げることを大きな仕事としてきた傾向があったのではないか。社会で活用されて初めて、研究成果は生きる」と省みる。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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