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【巨大津波 遅れた対策8】東電の備え不十分 最新研究成果生かせず

 「事前の津波評価の時に、必要な対策を採れたのではないか?」
 東京電力が今月12日に明らかにした社内の作業チームの報告に記された一文だ。福島第一原発事故から1年7カ月の間、多くの人が感じてきた疑問の1つともいえる。
 チームは、原子力改革特別タスクフォースと名付けられている。福島第一原発事故をあらためて検証し、過酷事故を二度と起こさないための対策を探る。「事故を振り返ってみると、問題は事前の備えができていなかったことであり、改善や安全性向上のチャンスを敏感に捉えて対策に結び付ける『改革プラン』が必要」との問題意識を掲げる。
 東電は今年6月に出した社内の事故調査委員会の最終報告で、東日本大震災による巨大な津波を「想定外」と主張し、強い批判を受けた。
 作業チームが報告で示した改革案は「事前に対処は可能だった」として、震災までの取り組みが不足していたことを反省する姿勢を示した。

■掘削
 東電は福島第一原子力発電所を大熊、双葉両町にまたがる海岸段丘地帯に建設した。段丘の海側は切り立った崖であり、その地表面は、基準とした海面(小名浜ポイント)から30メートル程度の高さにあった。
 段丘の上部は比較的、崩れやすい砂岩だった。発電所の建屋が地震の強い揺れの影響を受けにくいようにするため、固い地盤が必要とされた。安定した地層は海面より4メートル低い地中にある泥岩層だった。
 東電は段丘を掘り下げた。主な建屋を設置する敷地の地盤の高さは、予想される津波の高さ、作業スペース、原子炉や発電機が入る建屋の出入り口の高さ、掘削費などを考え合わせ、最終的に決められた。
 主な建屋の敷地は1~4号機(大熊町)が海面から10メートル、5、6号機(双葉町)が13メートルの高さにある。
 東日本大震災で発生した巨大な津波は敷地の高さを超えた。冠水は1~4号機側の区域が激しく、建屋周囲の浸水深は最大で約5.5メートルに及んだとされる。タービン建屋地下に設置された非常用ディーゼル発電機や電源盤が水に漬かり、使用できなくなった。この結果、原子炉などを冷やす重要機器のための電源を失う「電源喪失」につながった。
 「これまでの津波評価で敷地レベルの高さまで津波が襲来するとは考えていなかった」。東電原子力・立地本部原子力品質・安全部長の福田俊彦(54)は震災前の津波対応を振り返る。

■敏感さ
 福島第一原発は半世紀近く前の地震学などの知識に基づいて建設された。その後、地震や津波の研究が進み、建設時の想定を超える津波が起きる可能性や、想定を超える津波で原子炉の炉心損傷に至る弱さがあることが指摘されていた。
 東電は予想される津波の高さを見直したり、海水ポンプなどの設備を改善したりした。だが、国会の事故調査委員会は最終報告で断じた。「東電は危険性を軽視し、安全裕度のない不十分な対策にとどめていた」
 東電は最新の研究成果などを敏感に生かす機会を逸していた。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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