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【巨大津波 遅れた対策9】「敷地超え」考えなし 緊迫感、想像力欠ける

 東京電力福島第一原発が設計された昭和40年ごろ、津波に関する明確な基準は存在しなかった。このため、東電は過去の津波の痕跡を基に設計を進めた。いわき市・小名浜港で観測された最大の潮位を調べ、35年のチリ地震津波による潮位3.122メートルを設計条件に定めた。
 東電原子力・立地本部原子力品質・安全部長の福田俊彦(54)は「当時、津波対策の技術は進んでいなかった。過去のデータで最大のチリ地震津波が来ても冠水しないだろうとの考え方だった」と説明する。

■土木学会
 昭和45年4月、国の原子力委員会は、福島第一原発と同じ軽水炉タイプの原発の安全設計を審査する際の指針をまとめた。福島第一原発1号機が営業運転を開始する1年前で、既に原子炉圧力容器の据え付けや建屋の建設は終わっていた。
 指針の中で、国は考慮すべき自然条件の1つに津波を挙げた。「過去の記録を参照して、予測される自然条件のうち、最も過酷と思われる自然力に耐えること」を求めた。
 指針を踏まえた国の審査でも、チリ地震津波による潮位に対して「安全性は十分確保し得るものと認める」とされ、東電は国から設置許可を得た。
 東電は、その後に国内で起きた地震・津波などを基に津波に対する新たな安全性評価などを進め、国に報告していた。
 評価方法が大きく変わったのは、平成14年だった。土木学会が当時の最先端技術を使って断層などを解析した「原子力発電所の津波評価技術」を刊行した。これに基づき、福島第一原発の津波評価は最大で5.7メートルとされ、チリ地震津波に比べ、2メートル余り高くなった。厳しい仮定で評価し「2倍ぐらいの安全裕度がある」とみられた。
 土木学会のお墨付きによる手法が、日本の原発の標準的な津波評価方法として使われる出発点だった。

■海水ポンプ
 津波の被害が予測される機器の1つは、原子炉を冷やすための海水をくみ上げるポンプだった。日本の原発は、発電機を回した高温の蒸気を海水で冷やして水に戻す。その水を原子炉に送り、再び蒸気を生み出す。また、非常時にも海水を使うことを見込んでいた。
 福島第一原発には、想定される津波の高さより低い、海面から高さ4メートルの地盤に設けたポンプがあった。東電はポンプ用のモーターのかさ上げや、建屋貫通部の浸水防止対策などを進めた。
 東電は19年6月、県がまとめた本県の太平洋沿岸部の津波被害想定を入手した。福島第一原発周辺の想定は5メートルで、土木学会の手法による5.7メートルを下回っていた。「問題はない」。当時の東電関係者は判断した。

■地形から推測
 東電は大震災の2年前に当たる21年に、最新の海底地形と潮位観測データを使って再評価し、最大で6.1メートルに修正した。津波評価は設計の段階から約40年間で2倍近くに高くなった。
 ただ、敷地の高さは海面から10メートル以上あるため、東電は依然、余裕があるとみていた。その背景にあった考え方の一部が、東電の社内事故調査委員会の報告書に記された。「福島の地は、地形も平坦であり、津波が地形で増幅されるようなこともなく、近場で大きな地震がないことから、付随する津波高さも大きくはならないと考えていた」
 東電は、津波が敷地の上まで浸水する可能性はないという前提に立っていたため、発電所全体の大掛かりな津波対策を積極的に実施する段階には至らなかった。
 「原発プラントに致命的な打撃を与える恐れのある大津波に対する緊迫感と想像力が欠けていたと言わざるを得ない」。政府の事故調査・検証委員会(政府事故調)は最終報告で厳しく指摘した。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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