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【巨大津波 遅れた対応11】本県沿岸で痕跡確認 土木学会の結論待ち

津波で浸水した東京電力福島第一原発。震災前に出された貞観津波の論文を基に、東京電力は大津波を調査・研究していた=平成23年3月11日、東京電力提供

 東京電力が論文を入手したのは、福島第一原発事故が起きる2年半ほど前の平成20年秋だった。
 論文の提供者は、茨城県つくば市にある独立行政法人・産業技術総合研究所(産総研)の研究者だった。平安時代の貞観(じょうがん)11(869)年に東北地方などを襲った貞観津波を取り上げていた。宮城県の仙台平野や石巻平野で津波による堆積物を調べた結果を基に、貞観津波の発生位置や規模を推定した。
 2つの波源モデル案が示されたが、確定には至っていなかった。確定のためには「福島県沿岸などの津波堆積物の調査が必要」と指摘していた。

■試算と堆積物
 東電は、未確定の波源モデルを基に、試し計算を行い、津波を予測した。その結果、福島第一原発、福島第二原発の取水口前面で、基準とされた水面に比べ、7.8~8.9メートル程度の津波の高さが出た。当時、東電が福島第一原発で採用していた土木学会の評価手法による5.7メートル(後に6.1メートル)を上回った。ただ、福島第一原発の敷地の高さである10メートル以上よりは低かった。
 当時、産総研などの研究者が本県で調査する計画は未定だった。「データの精度を上げる必要がある」。東電は、独自に調査することを決めた。相馬市からいわき市にかけての本県沿岸部5カ所で土壌を採取し、津波による堆積物があるかどうかを分析した。
 その結果、福島第一原発の北に位置する相馬市の松川浦南方、南相馬市の小高区浦尻の両地区で、貞観津波が運んだと推定される堆積物を含んだ地層を確認した。堆積物の分布状況などを基に推計し、津波の遡上(そじょう)高を相馬市が標高0.5メートル以上、南相馬市が標高4メートル未満の数字をはじき出した。
 一方、福島第二原発に近い富岡町の仏浜、広野火力発電所に近い広野町の下浅見川、いわき市の平下高久の3地区では、紀元前1000年以降の土壌に津波の痕跡は発見されなかった。これを基に、東電は富岡町からいわき市にかけては「標高4~5メートルを超える津波はなかった可能性が高い」との考え方をまとめた。

■研究を継続
 「貞観津波などの調査はまだ途中だった。満足していたわけではない」。東電原子力・立地本部原子力品質・安全部長の福田俊彦(54)は強調する。
 津波堆積物の調査結果と、東電社内で行った試し計算に使った波源モデルに食い違いがあった。東電は波源の確定のためには調査・研究の継続が必要と判断した。
 産総研の研究者の論文は34月に正式に発表された。東電は調査結果などを土木学会に示し、貞観津波の波源モデルづくりを依頼した。土木学会の成果は平成24年ごろに出ると見込んでいた。その前に東日本大震災が起きた。
 福田は「土木学会に白黒を付けてもらい、対策を講じる考えだった」と語った。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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