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【コメ全袋検査の遅れ】新酒仕込み ずれ込む 酒米入荷滞る 中小蔵元30社に影響

 平成24年産米の放射性物質を調べる全袋検査が遅れている影響で、本県産の酒米を原料にしている県内65酒蔵のうち中小規模の約30社が新酒の仕込み作業に入れないでいる。例年は既に始まっているが、1カ月近くずれ込む見通しで、新酒として売り出す年末に発売が間に合わない懸念が広がっている。コメの全袋検査の遅れは酒蔵にとって昨年の風評被害に続き、復興への大きな壁になっている。

■空の倉庫
 例年、各酒蔵は年末に合わせて新酒を完成させる。早い酒蔵は9月下旬から、遅くとも11月ごろまでに日本酒の仕込みを始め、12月までには新酒を店頭に並べている。しかし、今年は例年なら酒蔵の倉庫に積み重なっているはずの酒米がなく、空っぽの状況だ。
 県内の酒米を原料にしている中小規模の酒蔵は県酒造協同組合に仕込みに必要な量を注文。組合が全農県本部を通し、各JAからそれぞれの蔵元に販売する。同組合によると、今年度、県内の酒蔵から仕込み用に注文を受けた酒米は約4万トン。本県の24年産米は約36万トンで約1割に当たる。36万トンのコメのうち、酒造りに適する「酒造好適米」は1200トンから1800トンとされている。

■例年の5%
 今年は全袋検査の影響で、各酒蔵に酒米が届くのが数週間から1カ月程度遅れている。同組合酒米対策委員会によると、加盟業者から注文を受けた4万トンのうち、注文のあった酒蔵に届いたのは21日現在でわずか30トン程度。通常この時期は600トンほどが行き渡っており、今年は例年の5%と大幅に遅れている。
 組合加盟の65社のうち、約半数の仕込み作業に影響が出ているのが現状。このまま県産米の入荷を待つか、県外産米を仕入れるか、さらには酒造好適米を諦め、一般米で代替するかの判断を迫られている。
 大手酒造メーカーや独自に県外酒米の仕入れ先と契約している酒蔵は、仕込みへの影響は出ていない。

■年内完了不透明
 県酒造協同組合は県がコメの全袋検査を決定した時「新米出荷が遅れてしまう」と懸念し、国や県に早急な検査実施を要望したが実現には至らなかった。
 県内では24年産米の出荷がピークとなっており、全袋検査が追い付かない状況が依然として続いている。県は「検査の担当者が作業に慣れ、効率は上がってきた」とみているが、年内に全量を完了する計画が達成できるかは不透明だ。
 県は全袋検査の対象を約1200万袋と見込んでおり、現段階で検査が終了したのは3割程度の400万袋強。残りの7割近くは今後、検査される。
 県水田畑作課は「出荷のピーク時を過ぎれば、検査が滞っている部分も解消できる」としている。だが、大量の検査待ちのコメを抱え、年内に検査を完了できる可能性は「ほぼない」とする関係団体もある。

【背景】
 東京電力福島第一原発事故の影響を受け、県は24年産米で放射性物質の全袋検査を実施して出荷することを決めた。日本酒の原料となる「チヨニシキ」「500万石」などの酒米も「酒造好適米」として一般米や加工米と一緒に全袋検査を受けることが義務付けられている。検査を通過した玄米の多くは全農県本部の精米所で精米され、白米として各蔵元に搬送される。

カテゴリー:3.11大震災・断面

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