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【巨大津波 遅れた対策13】「揺れ」への安全優先 敷地の高さを過信

東日本大震災後に福島第一原発に設けられた仮設の防潮堤=平成23年6月撮影、東京電力提供

 東日本大震災が発生する前まで、東京電力は土木学会の「原子力発電所の津波評価技術」を基本に、福島第一原発などの各原発の津波対策に取り組んできた。
 東電は昭和40年ごろ、福島第一原発を設計する際、チリ地震津波(35年)による潮位を基に、津波の高さを、基準とされる海面から最大3.122メートルと想定した。平成21年には土木学会の考え方と最新のデータなどを基に、最大6.1メートルに高めた。原子炉冷却用の海水を取り込むポンプは、海面から4メートルの場所に設置されていたため、東電はモーターのかさ上げなどの対策を施していた。
 津波工学を専門とする東北大の災害科学国際研究所教授、越村俊一(40)は「津波の評価や、対策が致命的におかしいわけではなかった。ただ、安全性の確保に重大な欠落があった」とみている。

■水密化
 原発の津波対策は、一般的には最新の科学技術で全貌を把握している地震を被害想定の対象に選ぶ。さまざまなシミュレーションを行いながら、予測よりも高い津波が押し寄せても、敷地内に津波が浸入しないよう、防波堤をはじめハード面を整えている。
 東日本大震災の津波は、想定の2倍を超える規模で福島第一原発に襲来し、大量の海水が敷地に流れ込んだ。津波の到達は「あり得ない」と東電が考えた場所に設けていた施設は、浸水対策が十分ではなかった。水に漬かった非常用ディーゼル発電機や電源盤は次々と使えなくなった。
 「最新の科学技術で解析しても、津波が施設に到達することはない」との論理に立てば、施設・設備自体に水が入り込むことを防ぐ水密化の必要性は低い。
 東電が進めてきた津波対策は、まさにその考え方だった。東電原子力・立地本部原子力品質・安全部長の福田俊彦(54)は「当時、津波は水位がどこまで来るかという問題に尽きた。設計上、敷地レベルで守れれば大丈夫、という考え方になっていた」と振り返る。

■随伴事象
 地震の多い日本で、原発の耐震対策は最重要課題の1つに位置づけられてきた。だが、地震の揺れに対する安全性の対策に比べて、津波への対策は遅れがちだったといわれる。
 国の原子力安全委員会は平成18年に、原発の新たな耐震設計審査指針をまとめた。最初の指針は昭和53年に定められていた。新しい指針には、その後の地震学や地震工学の知見の積み重ね、耐震設計技術の改良・進歩などを反映した。
 電力会社は国の指示を受け、既に運転している原発が新指針に照らして、安全性を確保しているかを、あらためて調査・評価した。「耐震バックチェック」と呼ばれる手法だった。
 東電は、国に対して、安全性を確かめたバックチェックの中間報告書を出した。ただ、中間報告書は原子炉建屋や、安全上の重要な機能を持つ主要設備などを対象とした。津波に対する安全性などの「地震随伴事象」は最終報告書に盛り込む予定だった。
 「津波がここまで原発の機能不全を引き起こすと考えられていなかった。『敷地に来ることが想定されないから対策は終わり』と扱われていたことが唯一で、最大の問題だった」。越村は、津波のリスクを総合的に考えて安全性を確保する視点が国や電力会社に欠けていたと分析する。(文中敬称略)

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

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