東日本大震災

「3.11大震災・福島と原発」アーカイブ

  • Check

【巨大津波 遅れた対策14】痕跡調べ成果を報告 国の公表前に大震災

産総研が行った貞観津波の堆積物を調べる掘削調査=産総研の活断層・地震研究センター編集・発行「AFERCNEWS №16」より

 陸奥国で地震が起き、人馬に大きな被害をもたらした。壊れた建物は数知れない。津波が遡上(そじょう)して、城下に至り、溺死者は1000人に及んだ-。
 貞観(じょうがん)11(869)年5月に起きた地震と津波は、歴史書「日本3代実録」に記されている。文中の国名は陸奥のみで、「郡」は書かれていないが、「城」の記述は宮城県内の「多賀城」とみられている。
 東北大が1990年ごろに調査し、仙台平野の内陸部に津波の痕跡を確認した。その後も、国内の研究機関や研究者は全容解明への取り組みを続けていた。東日本大震災の発生によって、1000年余り前の巨大地震・津波への関心は一気に高まった。
 茨城県つくば市にある独立行政法人・産業技術総合研究所(産総研)活断層・地震研究センター長の岡村行信(57)は「自治体の防災対策に反映されていなかった。詳細を明らかにする必要があった」と顧みる。

■自然の警告
 産総研は平成16年に貞観地震の調査に乗りだした。
 過去の研究から津波が襲ったとみられる宮城県や本県の沿岸部を調査対象とした。海岸線から内陸部にかけて地層を抜き取り、津波で運ばれた砂の層がどの範囲まで堆積しているかを調べた。
 本県では相馬市の松川浦、南相馬市の鹿島区と小高区、富岡町で地面を掘削した。その結果、南相馬市小高区で津波堆積物があることが明らかとなった。貞観津波が襲った当時、海岸線の位置が現在とほぼ同じと仮定すれば、津波は内陸1.5キロにまで及んでいた。
 産総研は堆積物の分布から、津波を起こした地震の規模を「マグニチュード8.4」と推し量り、貞観地震のモデルを作った。
 研究成果は平成22年、産総研が国に提出した。「堆積物は自然の警告だ。痕跡を丁寧に調べ、対策を整えれば被害を防げるはず」。岡村は調査結果が行政の津波対策に反映されることを願った。

■無力感
 東日本大震災で産総研も強い揺れに襲われた。
 研究室から廊下に逃れた岡村は、震源は宮城県沖との情報を耳にした。近いうちに発生すると想定されていた宮城県沖地震によって、つくば市がこれほど揺れるとは考えられない。「貞観地震の再来」と感じた。
 国の地震調査研究推進本部は、産総研などの研究成果を地震の長期評価に反映し、公表する予定だった。東日本大震災の発生は、まさにその矢先の出来事だった。
 「研究成果は防災対策に生きなかった」。岡村は悔しさと無力感にさいなまれた。(文中敬称略) 

カテゴリー:3.11大震災・福島と原発

「3.11大震災・福島と原発」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧