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農家「なぜここで...」 早く原因究明を 県など市場のコメ安全強調

稲刈りに励む西袋地区の農家=24日

 福島県の平成24年産米の全袋検査で1キロ当たり100ベクレルの基準値を超える放射性セシウムが初めて検出された24日、コメが収穫された水田がある須賀川市の旧西袋村の農家に戸惑いが広がった。「なぜここで。細心の注意を払っていたはずなのに...」。出荷制限による一層の遅れも懸念される。農家からは、原因の早期究明を求める声が上がった。

 地区内の農家設楽宗雄さん(59)は「残念だ。なぜこの地区で」と悔しさをにじませる。
 稲作を始めて40年近くになる。農地に除染資材をまくなど、放射性物質対策には念を入れ、これまで検査が済んだコメは全て検出下限値未満だ。「既に市場に出荷されているコメは全て安全性が確認されている。風評が広がらなければいいが」と不安を抱えている。
 地区の一部で24日も稲刈りが行われていた。全袋検査に加え、今回の出荷制限により例年より時期はかなり遅くなる。作業をしていた50代の農家男性は「出荷がいつになるか見通せず、価格が今後どうなるか心配だ」とため息をついた。
 地区の稲作に取り組む認定農業者らでつくる西袋地区農業振興プロジェクト委員会。稲作普及に向け、ほ場整備などに取り組むため9月に発足したばかりだ。今後、除染なども進める計画で、委員長を務める渡辺喜吉さん(58)は「基準値超えのコメがどういった経緯で出たのか、原因を究明すべきだ」と力を込めた。
 市によると、基準値を超えるコメが生産された水田の周辺に、放射性物質がたまるような森林などは少ないという。昨年の地区内の検出最大値は1キロ当たり80ベクレル台で、現段階で基準値を超えた原因ははっきりしない。
 市は今後、出荷制限解除に向けた管理計画策定などを急ぐ。橋本克也市長は「地区内の農家が一刻も早く自信を持って市場に出荷できるよう県をはじめ関係機関・団体と連携して取り組む」とした上で、「東京電力福島第一原発事故にあらためて強い憤りを感じている」とコメントした。

 「基準値を超えるコメが出る事態は想定内だ。そのようなコメを逃さない体制として全量全袋検査を導入している」。県水田畑作課の天野亘主幹兼副課長は冷静に受け止める。その上で「だからこそ市場に出回っている本県産米は全てが安全性が確認されていると言える」と強調した。
 コメどころ会津地方のあるJA幹部も「今回のように基準値を超えたコメが水際で抑えられることこそが全袋検査の意義。消費者の安全・安心を確保するためには欠かせない」と話す。
 全袋検査を実施しているJA新ふくしまで現段階で検査が終了したのは3分の1程度。福島市内には昨年収穫したコメから検出した放射性物質が比較的高かった地域もある。
 同JAで検査を担当する丹治基春園芸特産センター長は須賀川市の事例を受け、「厳格な検査の必要性があらためて示された形。一層、緊張感を持って臨まなければならない」と気を引き締める。

■消費者 「確実な検査実施を」
 全袋検査で基準値を超える放射性物質が検出されたことに、県内の農家から風評被害を懸念する声が上がり、消費者は検査徹底をあらためて求めた。
 約2ヘクタールの水田で稲作をする福島市の農業遠藤秀夫さん(61)は「対策を講じている中で基準値を超えることはないと思っていた」と受け止めた。その上で「県全体のコメの風評被害につながらなければいいが」と望む。
 1歳の子どもを持つ本宮市の主婦(31)は「他の地域でも検出されるかもしれない」と全袋検査の確実な実施を求めた。福島市の会社員渡辺幸子さん(52)は「検査されていることで県産米は一番安全だと思える」との考えを示す。一方で、「今回の基準値超えで不安に思う人も増えるのではないか」と気をもむ。
 東京に住む娘に地元産農産物を送っているという須賀川市の主婦増子安子さん(59)は「店で買える農産物は安全だと信じている。今後も購入し続ける」と話している。

カテゴリー:福島第一原発事故

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