東日本大震災

「あなたを忘れない」アーカイブ

  • Check

畳店経営、いつも車座の中心

■南相馬市原町区小沢 小沢栄治さん(59)
 小高(現小高商)高を卒業し、南相馬市鹿島区の畳店で修業後、父の敏男さん(84)が守り続けてきた畳店を継いだ。平成15年ごろから、平日は南相馬市の運送会社で働き、週末は家業に精を出していた。
 妻美智子さん(59)は「家族思いの夫だった。自宅にいた両親と私の身を案じて車を走らせたのでしょう」と当時を思い浮かべる。
 栄治さんは地震発生時、揺れが収まるまで運送会社にいた。栄治さんが見つかったのは、自宅から1キロほど離れた6号国道そばの林の中だった。栄治さんの同級生が津波から逃げる際、数台後ろを走る栄治さんの車を確認していた。運送会社で使っている白い乗用車を運転していたという。
 栄治さんは美智子さんと晩酌するのを楽しみにしていた。テレビの話題やその日の出来事などを話しては家族を笑わせた。寝る前にはハーモニカで井上陽水のフォークソングなどを吹いていた。同級生や地域住民から慕われ、よく杯を交わした。車座の中心にはいつも栄治さんの笑顔があった。
 温泉が好きで、美智子さんと県内外を巡った。休日は自宅でまきを使って風呂を沸かした。母サタ子さん(82)は「ばあちゃん、先に入れ入れ」と気遣ってくれた栄治さんの姿を思い出す。
 栄治さんに畳店を任せて一線から退いた敏男さんは、栄治さんを頼りにし、誇りに思っていた。「あいつが生きていれば同級生と一緒に地域をまとめる年代だった。同級生を見掛けると息子を思い出してしまう」と涙を拭った。

カテゴリー:あなたを忘れない

「あなたを忘れない」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧