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復興への選択(1)「お役所仕事」変わらず 進まない生活再建

仮設住宅では冬支度が始まった。被災地、有権者にとって復興を託す師走の総選挙が間もなく訪れる=福島市飯坂町

 古里を離れてから二度目の冬が来た。福島市飯坂町の仮設住宅。浪江町から避難する74歳の女性は、隣に座る80歳になる夫の手をさすりながら話し掛けた。「じいちゃん、あったかい家に早く帰りたいな」。今はまだ自宅に戻れるあても、落ち着いて生活できる新たな住居に移る見通しもない。部屋には時を刻む時計の音だけがむなしく響く。
   ◇  ◇
 夫婦は浪江町が構想を打ち出した町外コミュニティー(仮の町)に建設される災害公営住宅への入居を希望している。だが、同町を含め双葉郡4町が掲げる「仮の町」構想はなかなか進まない。
 「仮の町」整備は自治体の中に別の自治体を移す前例のない取り組みだ。実現に向けては住民票を異動していない避難者への居住証明書の発行、医療・福祉施設の設立認可、道路整備の費用負担などの課題を解決する必要がある。
 所管省庁がそれぞれ対応を検討してはいるものの、結論はなかなか出てこない。「各省庁の動きはばらばらで、議論にばかり時間が取られている」。避難者の生活再建を急ぐ町や県の関係者からはため息がもれる。
 県内3カ所に「仮の町」を整備する予定の富岡町。町長の遠藤勝也は「仮の町」に移る住民の生活再建のために避難区域別に設定されている賠償を一律にするよう担当の経済産業省に求めた。しかし、区域再編に絡むため内閣府に要望してほしいと言われた。「復興に関する業務は復興庁がワンストップで受け付け、調整してくれると思っていた。国の縦割りの構造は何も変わっていない」と、いら立ちを隠さない。
 「仮の町」を受け入れる側も頭を抱えている。いわき市などは受け入れに際し、長期的な財政支援などを求めている。要望から半年以上たった今も明確な返答はない。総務省は「行政機能の長期避難というまれなケースのため時間を要している」と説明する。
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 国の動きの鈍さは「仮の町」の整備に限らない。除染、中間貯蔵施設整備、避難区域再編...。県内の首長からは「スピード感がなさ過ぎる」と不満が出ている。前代未聞の事態で、ある程度、時間がかかるのはやむを得ない面はある。ただ、復旧・復興の取り組みの陰には「お役所仕事」とやゆされる縦割りや前例主義の弊害が見え隠れする。「我慢も限界だ」。避難生活を送る人からは悲痛な声が上がる。
   ×  ×
 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後、初の国政選挙を迎える。発生から1年8カ月が経過した今も、約16万人にのぼる避難者の生活再建、県土の除染など課題は山積し、復旧・復興の足取りは重い。県民の目に国や政治はどのように映り、何が求められているのか。被災地の視点から問い直す。(文中敬称略)

カテゴリー:復興への選択

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