首都ミンスクにあるロシア・ベラルーシ情報センターは、放射線に関する情報を一元的に集約し、全国に発信している。地域の隅々まで情報を伝えるため、各学校など50カ所に下部組織を置く。視察した県商工会館常務理事の三瓶弘次さん(60)は「統一した情報が住民の安心感につながっている」と感じた。
チェルノブイリ原発事故は1986年4月26日。旧ソ連政府の情報発信は遅れ、デマや憶測が飛び交った。住民には放射線の知識がなく、不必要に被ばくした例もあったとされる。トラフィムチク・ゾーヤ所長は「事故直後は情報がほとんどなく、住民は不安の中にいた。現在は正しい情報を伝えることが私たちの最大の使命だ」と語った。
センターは放射線に関する指導者の育成にも取り組んでいる。年に一度、全国の職員を集めた研修会を開き、各地からの情報を共有している。2050年までの予測を含めた各地の線量マップ、被ばく防止に向けた対応など放射線に関する情報を「百科事典」のようにまとめ、定期的に発行している。
若者の放射線について関心が薄れることのないよう、気軽なイベントとしてクイズ大会などを開き、正しい知識の普及に努めている。
福島市の県労働保健センターの菊池誠一さん(42)は、甲状腺の検査結果などの説明不足で混乱が生じた本県の状況と重ね合わせ「情報を受ける住民だけでなく、説明する側の行政、子どもを指導する教育者らへのしっかりした情報提供の体制が必要だ」と話した。
参加者は視察の成果を自身の業務などに生かす重要性をあらためて感じていた。(本社報道部・江花 潤)
(カテゴリー:ベラルーシの今 福島市放射線対策視察団同行)