東日本大震災アーカイブ

明日への提言 賠償要求県民と連携 県弁護士会長 本田哲夫氏

 東日本大震災、東京電力福島第一原発事故から1年9月が経過した。依然として県民に対する賠償の問題は山積している。被災者救済を支援してきた県弁護士会の本田哲夫会長に、これまでの取り組みや今後の課題などを聞いた。

 −県弁護士会は昨年9月に原子力発電所事故被害者救済支援センターを設けるなど積極的に賠償問題に取り組んできた。

 「原発事故後、弁護士を紹介する『原子力発電所事故被害者救済支援センター』を設立し、今年4月には南相馬市に出張所を置いた。弁護士132人が登録しており、被災者救済に向けて万全の態勢を取っている」
 −避難区域での賠償の課題は。

 「慰謝料と財物賠償が挙げられる。中間指針が示す慰謝料の月額は10万円で少ない。政府の原子力損害賠償紛争解決センターへの申し立てで増額したケースもあるが、ほとんどが数万円で頭打ちの状況。財物に関しても平行線をたどる。適正な賠償額を求めて訴訟に向けてかじを切るケースが出てきた」
 −5日、東電が避難区域外の住民に対する精神的賠償の基準を示した。

 「8月末で賠償の打ち切りを判断した内容だ。除染の進捗(しんちょく)状況や放射線量の推移を見ても、一区切りが付いたとは思えない。不満を感じて原子力損害賠償紛争解決センターへの申し立てや裁判所への提訴に踏み切る人が増えるだろう」
 −原発事故による避難生活の長期化で震災関連死の認定が難しくなるのでは。

 「避難生活が長引くことで高齢者の心身への負担がさらに大きくなっている。災害弔慰金の手続きを支援するため、10日に電話相談『弁護士による災害弔慰金11○番』を開設した。この他にも、弁護士会として、平日午後2時から4時まで、無料の電話相談を受け付けている」
 −原子力損害賠償紛争解決センターでは和解までの期間が長期化する傾向が続いている。

 「センターの和解仲介が遅いため申し立てを取り下げた人がいるようだ。調査官(弁護士)の人員が少ないことが課題だったが、日弁連が協力して人員増加の方針を示した。和解までのスピードアップにつながることが期待される」
 −今後、どのように原発事故の被災者の救済に当たっていくか。

 「被災者に寄り添う立場に変わりはない。あくまで金銭の賠償だが、一定の基準が示される区切りのたびに県民と連携し、県民にとって必要な賠償額を要求することで福島県の復興に協力したい」
 ほんだ・てつお 猪苗代町生まれ。会津高、早稲田大法学部卒。昭和59年に弁護士登録、同62年に郡山市に法律事務所を開設した。平成24年4月から県弁護士会長を務める。55歳。

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